「自分たちのことは自分たちで決める」学生が自ら運営 大学から立ち退き求められている国内最古の学生寮 京都大学・吉田寮
さらにその前の明治時代にあった「学生寄宿舎」の木材が再利用されるなど、あちこちに、激動の時代の跡が刻まれています。
吉田寮は建設された当初から、寮生と大学がたびたび対立してきました。1980年代には、管理を強めようとした大学が廃寮を決めたことに寮生たちが反発。学校と交渉し、当時あった「西寮」の撤去などを条件に立ち退きを免れたこともありました。 その火種は、現代までくすぶり続けています。
それまで大学側と吉田寮の運営については話し合って決定するという「確約書」を交わしていたこともあり、寮生は反発。さらに寮生の内、40人あまりが大学から立ち退きを求め訴訟を起こされることに。 訴えを起こされた寮生の1人、大学院教育学部修士2回生の大隈楽さん。学業にも影響があったといいます。 (大隈さん) 「裁判やったら何年もかかるのもわかってるし」 「不本意に授業を休まないといけなかったりとか時間的な負担でしたし、精神的にも負担ですよね。“大学に訴えられてる”と言われ続けるわけなので」 「意見が違うだけだし、これまで話し合いで解決してきたような、学生自治会とのやり取りっていうものに対して、そこまでしてしまうのかと」
訴訟は5年近く続いた末に、ことし2月に判決が言い渡されました。 京都地裁は「大学に、老朽化を理由に退去を求めることができるという規定が存在しない」として現在も寮に住む寮生のほとんど(17人中14人)は、退去する必要はないと判断しました。 実質、寮生たちの勝訴でしたが、大学側が控訴。訴訟は今も続いています。
自分たちで守り抜いた大切な居場所。その経験は寮生たちに根付いています。 (卒業する寮生) 「自治寮に入る前は決められたことに従うのが当たり前みたいに思っていたんですけど」 「大学がどうあるべきか考えるきっかけにすごくなったなと思っています」 (学部を卒業し大学院に進む泉さん) 「自分よりも偉い立場の人に対してもちゃんと意見を言うし、自分より偉くない立場の人からもちゃんと意見を聞く。それに対して真摯に答えるという、そういう態度が育ったんじゃないかと思います」 (被告の大隈さん) 「差別とか不平等とかそういう問題とかも、より当事者意識を持ちながら、学んだり考えたりすることができるようになった」 「誰かから与えるんじゃなくて自分自身で考えてやっていくっていう方法は面白いし」 「自治は学生の権利だし 人間として生きる権利のひとつだと学べたのが寮だったかなと」