杉咲花×若葉竜也『アンメット』3話考察「食べて、いまを生きる」こと
記憶障害を「人生の持ち物が増えただけ」とミヤビは語る
ミヤビ(杉咲花)と三瓶(若葉竜也)の思いがけない過去の関係が明らかに。ミヤビが手術することに反対する津幡(吉瀬美智子)と病院スタッフとの溝が深まるが……。『アンメット ある脳外科医の日記』(フジテレビ系月曜夜10時~)3話を、ドラマを愛するライター・釣木文恵と、イラストレーターのオカヤイヅミが振り返ります。
「治るかも」の希望を恐れるミヤビの目
冒頭で川内ミヤビ(杉咲花)と三瓶友治(若葉竜也)が婚約していた過去があることが明らかになった3話。ミヤビのために記憶障害の研究をしてきたという三瓶は「僕に一度、川内先生の脳を調べさせてもらえませんか」と伝える。 主治医である関東医大の大迫(井浦新)からは治療法がない、現状維持が精一杯だと伝えられていたミヤビの「がっかりするじゃないですか。治るかもって期待してもしだめだったら。怖いです」と言葉をこぼすときの目。毎朝を絶望で始めてきたミヤビの、1年半の重さが伝わってくるようだった。 婚約について話す前に「これから言うことは日記には書かないでください」という前置きをどういう気持ちで三瓶が発したかはわからない。そして、半信半疑の気持ちごとその言葉を日記に残していたミヤビは、翌日、星前(千葉雄大)から二人の映った写真を見せられ、ますます迷う。 星前は関東医大にミヤビのMRI取り寄せを依頼するが、関東医大会長の孫であり脳外科秘書の西島麻友(生田絵梨花)に断られてしまう。「大迫の意向」と言ってはいるが、どうやら依頼自体が大迫に伝わっていない模様。婚約者である綾野楓(岡山天音)がかつてミヤビに思いを寄せていたことから、麻友はミヤビの回復を邪魔しようとしているのだろうか。これまでの描写では、綾野と麻友はお互い政略結婚であることを納得済みという感じなのだが。ゴルフの練習シーンでの麻友の表情からすると、案外綾野に対して本気なのだろうか。
ミヤビと三瓶を明るく支える星前
これまでもミヤビが手術をすることに反対の立場をとっていた看護師長の津幡(吉瀬美智子)。3話では津幡が大迫を訪ね、ミヤビを手術から遠ざけるよう直談判したことが病院で噂になる。日頃の周りに対する厳しさもあいまって、院長の藤堂(安井順平)に抗議する星前。藤堂は、かつて自分と津幡が遭遇した出来事について語る。それは、津幡が厳しくなるきっかけとなった医療ミスだった。 この過去を聞いた星前がミヤビにそのことを伝えたシーンでは、星前と三瓶とが「正常化バイアス」「教授にものを言いにくい雰囲気」「医療事故調査制度ができる前」と、その原因や問題点を次々と挙げていったところが実にスマート。理屈っぽくなく、こういった出来事が現実にも有り得ることが伝わってきた。 ミヤビは津幡をジップラインに誘い、直接話す。津幡はミヤビのことをしっかり見たうえで「準備と覚悟」がまだできていないと反対したこと、自分に足りないのは「あなたたちを信じること」と語り、ミヤビとわかりあう。 そんな中、一人ひとりのちょっとしたミスから重大な医療事故に繋がりかねないできごとが起きるが、みんなで力を合わせて乗り越える。スタッフは津幡の厳しさを理解し、津幡は相談しにくい空気を作っていたことを謝る。 ミヤビの医療行為を支えようとするなど、いいところも垣間見えつつ、1話~2話では「調子のいいヤツ」という雰囲気のほうが前にきていた星前。3話では、スタッフたちの不満を受け止めて上に抗議し、ミヤビと三瓶のために動き、津幡の振る舞いが悪意からでないことをミヤビに伝え……と、次々とファインプレーを見せてくれた。シリアスなミヤビと三瓶との関係に、なごやかさをもたらしてくれる星前に、今後も期待したい。