杉咲花×若葉竜也『アンメット』3話考察「食べて、いまを生きる」こと
食事シーンから伝わってくるもの
3話では、ミヤビの食事シーンがたくさんあった。居酒屋での同僚たちとの飲み会、食堂での綾野とのランチ、自宅に友達である看護師の森(山谷花純)を招いての夕飯、ジップラインを体験した先で津幡と食べたお弁当。ものを食べながら人と話し、気持ちを通わせる。それはいまを生きるということだ。記憶障害という後遺症を「人生の持ち物が増えただけ」と語るミヤビは、前を向き、一日一日を生きている。 綾野との食事の場で、ミヤビの「ひと口がでかい」という話題が上がるところもよかった。他にも、ミヤビが津幡について日記に「ああ見えて仲間思い」と書いていたというくだりの「ああみえて」の部分。津幡がかつては酔っ払うと歌いまくって踊りまくっていたというエピソード。いずれも、省略されても展開には影響を及ぼさないような、けれどそれがあることでぐっと奥行きが増す要素だ。それぞれの人がもつ、ささやかな魅力がこのドラマには散りばめられている。 3話終盤、ミヤビは日記から婚約に関する記述と迷う気持ちを消し、上から「私は三瓶先生を信じる。」と書く。その行為には、手術のときに三瓶に「手術ができる」と言われたことを「思い出した」ことも影響しているのだろうか。そして、三瓶が見る限り、記憶障害の原因が見当たらないというミヤビの脳はいったいどうなっているのだろう。 ●番組情報 『アンメット ある脳外科医の日記』(カンテレ) 脚本:篠﨑絵里子 原作:子鹿ゆずる(作)大槻閑人(作画)『アンメットーある脳外科医の日記ー』(講談社『モーニング』連載) 演出:Yuki Saito、本橋圭太 出演:杉咲花、若葉竜也、岡山天音、生田絵梨花 他 プロデューサー:米田孝、本郷達也 主題歌:あいみょん『会いに行くのに』 FOD、Netflixにて全話配信中(有料) ●釣木文恵 つるき・ふみえ/ライター。名古屋出身。演劇、お笑いなどを中心にインタビューやレビューを執筆。 ●オカヤイヅミ 漫画家・イラストレーター。著書に『いいとしを』『白木蓮はきれいに散らない 』など。この2作品で第26回手塚治虫文化賞を受賞。趣味は自炊。 Edit_Yukiko Arai
GINZA