「議員が落選したら翌日から職探しですよ」 波乱の衆院選が終わり、候補者の当落に去就が左右される「議員秘書」の心労
10月27日投開票の衆議院選挙は、自公与党の過半数割れで終わった。顔見知りの国会議員も多い『女性セブン』の名物ライター“オバ記者”こと野原広子さんは、この結果を見て何を感じたのか。オバ記者が綴る。 【写真】オバ記者こと野原広子さん
* * * 「もし2年半に1度、倒産すると決まっている会社があったら入社しますか?」と聞かれたのはいつだったかしら──。 折しも衆議院選挙開票翌日の10月28日、「自民大敗!」という文字がネットニュースに躍っているのを見ながら、そんなことを私に聞いた議員秘書の顔を思い出していたの。 ご存じの通り、今回の選挙で自民党は56議席減り、公明党も8議席減らしている。その結果を「まさか、ここまで?」と、私は呆然と見守った。というのも、私は某自民党議員の事務所で時々アルバイトをしているから、働き口がなくなったら困るのよ。 その衆議院議員とひょんな出会いをしたのは2018年の秋のこと。当時の私は60才を超えて、ライター業だけでは生活が成り立たず、週に2~3日、倉庫や衣料品店のバックヤードで肉体労働のアルバイトをしていたの。 そうしたら父親が末期がんになり、その直後に年子の弟の胃がん(末期)が判明。入院と葬式が続いて何が何やらわからない状態のときに、19年同居した最愛の猫が他界。そうこうしている間にコロナ禍が襲いかかり、その渦中の2021年秋に衆議院選挙。けれど私は、母親のシモの世話で待ったなしの戦いの最中。 不幸は一つや二つ重なるからそう感じられるのであって、短期間に3つも4つも続くと、気持ちが動かないんだわ。思えば、テレビの前で落ち着いて開票結果を見たのは今回が初めてだったんだよね。
「公設秘書も、議員が落選したら翌日から職探し」
6年も議員会館でアルバイトをしていれば、笑って話を交わす議員の知り合いが何人かいる。 その当落はもちろん気になるけど、開票から一夜あけて思い浮かぶのは、議員より議員秘書たちの顔なんだよね。 ご存じかどうか、議員秘書といってもその立場はさまざまでね。 トップは国家試験を通った政策担当秘書で、その下に議員が任命する公設第一秘書と公設第二秘書がいる。さらに、地元に根を張っている私設秘書が5~10人。末端には私のような不定期のアルバイトもいて、1人の議員の周りに零細企業くらいの人が働いているんだわ。その人たちが失業して路頭に迷うかどうかというのも選挙の一面なんだよね。 「公設秘書も、議員が落選したら翌日から職探しですよ。好きでやっていると言われたらそれまでだけど、約2週間の選挙期間中、秘書は最低限の睡眠時間と食事時間で選挙活動をしています。その間、衆議院事務局に雇われている公設秘書に給料は出ません」(ベテラン秘書のNさん) そうした実態を、議員会館でアルバイトをするまで私は知らなかった。知らなかったといえば、議員秘書の仕事内容もそう。 まず、議員のスケジュール管理は誰でも想像がつく。だけど、新人議員の秘書となると、それこそ永田町の仕組みを手取り足取り教えなければならない。てか、複雑怪奇な国会議事堂に、新人がひとりで足を踏み入れたらまず迷子になる。行くべき会議室まで秘書について行ってもらわなければどうにもならない。非常ベルのような音が鳴るのは本会議開会の10分前と始まる直前の2回、なんてことも新人は知らない。 しばらくして永田町の地理がわかって議員らしくなると、与野党ともに議場で一般質問をする。テレビ中継されるのはこのシーンだ。そこで恥をかかないためには、各省庁の役人からこれまでの国の方針についてレクチャーを受けないと話にならない。どの省庁のどの部署の役人から何を教えてもらうか、それを決めるのは政策担当秘書なんだよね。