子宮体がん、術後に脈管侵襲陽性 再度手術か化学療法かを選ぶ基準は がん電話相談から
がん患者やその家族が悩みを寄せる「がん電話相談」。今回は子宮体がんの手術後に、脈管侵襲(血管やリンパ管でがんが見つかること)が判明した54歳女性に、がん研有明病院の元婦人科部長、瀧澤憲医師が答えます。 ――子宮体がんと診断され、3月に初回手術(子宮・卵管・卵巣切除と骨盤リンパ節郭清術)を受けました。しかし術後の診断で脈管侵襲が見つかり、主治医から再手術(傍大動脈リンパ節郭清)をするか、化学療法(抗がん剤による治療)をするかを選ぶように言われ困惑しています。 「術後の病理検査結果を詳しく教えてください」 ――がんは中分化型(悪性度が3段階の中間であるグレード2=G2)の類内膜がんで骨盤リンパ節転移は陰性、病期はⅠA期(子宮体部筋層への浸潤が2分の1未満)でした。脈管侵襲とは何ですか。リンパ節転移と関係しているのでしょうか。 「脈管とはリンパ管や微小な血管(毛細血管)を指す言葉で、侵襲とはこれらの管の中にがん細胞が侵入している状態です。リンパ管侵襲が陽性だと、がん細胞が、がんがあった場所の近くや周囲のリンパ節に転移している可能性が高いことを示唆します。骨盤リンパ節郭清をしていない場合には、再手術で骨盤リンパ節郭清をするほうが無難です。一方、毛細血管内にがん細胞が侵入している場合は、がん細胞が血流に乗って遠隔転移(離れた場所の臓器への転移)している可能性があります」 ――私の場合、リンパ管侵襲は陽性でしたが、郭清した骨盤リンパ節への転移はありませんでした。他のリンパ節に転移する心配はないでしょうか。 「まずがんの悪性度別に転移のリスクを説明します。相談者が患う類内膜がんは、正常な細胞の形に近く、比較的悪性度が低い高分化型(G1)▽細胞が正常な形ではなく悪性度が高い低分化型(G3)▽悪性度が中間のG2に分かれます。G1やG2の場合、骨盤リンパ節に転移したあと、そこから続くリンパ路を経由して、傍大動脈リンパ節に転移することが多いです。ⅠA期のG1、G2での骨盤リンパ節転移は、5~10%くらいですが、転移陽性者の約半分は傍大動脈リンパ節にも転移しています」 「相談者の場合、G2で骨盤リンパ節転移は陰性ということなので、傍大動脈リンパ節に転移するリスクはかなり低いでしょう」