さっさと年賀状さばいてこいよ!…トラウマ抱えた年金月17万円の68歳独身・元郵便局長「退職金2,000万円」で定年も、現役時代の悪夢が「老後破産」を招いたワケ【FPの助言】
働いているあいだは当然いいことばかりではありません。いいことも悪いこともたくさん経験するでしょう。しかし、トラウマ級につらい経験をすると、退職後までひきずる人も少なくないようです。ひどい場合、それが老後の生活に甚大な影響をおよぼして……。本記事では、Aさんの事例とともに、老後のマネープランについて、社会保険労務士法人エニシアFP代表の三藤桂子氏が解説します。 【早見表】年金に頼らず「夫婦で100歳まで生きる」ための貯蓄額
気ままなおひとりさまのはずが…現役時代に貯金できなかったワケ
Aさんは郵便局員として38年勤め、現在68歳。60歳で定年退職後、嘱託職員として65歳まで郵便局で働いてきました。65歳から年金は月17万円ほど受け取っており、長年勤め上げたことから、贅沢をしなければ、日常生活はなんとか過ごせる程度の収入があります。 貯金は退職金2,000万円と合わせて、3,000万円ほど。おひとりさまのAさんなら、貯金がもう少しありそうですが、コツコツと貯金してはいたものの貯められない事情がありました。 郵便局員時代の厳しい「ノルマ」 郵便局では、郵便・貯金・保険・ギフトなどを取り扱っています。なかでも郵便は、皆さんも一度とはいわず、「年賀状」を出したことがあるでしょう。一昔前では、離れた親戚や友人に挨拶というと、郵便が主流でした。年賀状は一年の挨拶をするために多くの枚数を送っていたことでしょう。 Aさんの郵便局では、年賀状をある一定枚数を販売しなければならない「ノルマ」が課せられていました。親類や友人を中心に年賀状を購入してもらおうと営業していましたが、毎年、ノルマが達成できず、残った枚数分を自身で購入することが慣例となっていました。当時の上司からは、「さっさと年賀状さばいてこいよ!」と怒号が浴びせられることも日常茶飯時。 さらに、お中元、お歳暮などの時期を中心に「商品のノルマ」も。その都度、近しい人に購入等をお願いし、目標未達成にならないよう自身でも商品を購入し、お世話になった人へ贈っていました。 保険も同様に、お客様にお勧めする一方、自身でも加入し目標を達成させます。公益財団法人生命保険文化センターの「2021(令和3)年度生命保険に関する全国実態調査※」によると、なんらかの保険に加入している世帯は89.8%、年間払込保険料は37万1,000円となっています。つまり、月約3万1,000円の保険料を支払っていることになります。 単身世帯のAさんは、2人以上世帯に比べると、一般的に毎月の保険料は少なくてすみそうですが、Aさん自身でも目標額達成のため、少しずつ加入内容を充実させていった結果、月合計7万円の保険料を支払い、親戚や友人にも保険商品を勧めてきました。 ノルマを未達成にせず、やりきった功績が評価されたこともあり、50歳目前で郵便局長に。しかし、定年を迎えるまでは、郵便やカタログ販売・保険等で局内の目標を達成できるよう努力してきました。 そしてやっとやってきた定年。「ノルマの悩みがなくなる……」Aさんは肩の荷が下りた思いがしました。