30代での心身の衰弱を乗り越えた、森口博子流セルフケア術とは
改めて仕事を増やしていくなかで、森口博子のガンダムソングの価値も再評価されていく。 「40代のライブで、“50代でもガンダムのテーマを歌います”って、なんの確証も根拠もないのに宣言したんです。そしたら、その後、安彦良和監督(ガンダムシリーズ作品のキャラクターデザインを長く担当。『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』で総監督、『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』では監督を務めた)から、“そろそろ50代ですよね”と、50代を迎えて映画「機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島」主題歌のオファーをいただけた。なんとライブのMCを覚えていて下さったんですよ。“この作品に森口さんの声が欲しい”って仰って下さって。素敵じゃないですか?」 長い人生。必ず訪れるバイオリズムのアップダウン。マインドセット次第でやり過ごすことができるのは、森口さんが証明してくれる。 「沈む時期があるのも通常営業。これくらいの気持ちが大事です。人間はバイオリズムの生き物だと。ダウンの時は、とかく“なぜ自分ばかり”と思いがち。誰しも訪れるけど、皆それを口にしないだけ。だったら、私はそこで前を向きたい。絶対上がる時が来るのだから、今こそその時にしっかりと自分を表現できるように準備をしておこうと。しなかったという後悔だけはしたくないですから。落ちている時こそチャンスです」 それを身をもって体現してきた人の言葉は強い。
言霊を信じて、なんでも口に出していく
「若い時は、“辛い”って言ったら負けだ、なんて思っていたんです。でも、そこはもっとオープンに言うべきだったかなと」 振り返れば、しんどい時代を迎えてしまった一因を自分にも向け、内省を惜しまない森口さん。成功者らしいストイックさも垣間見せる。それは、きつい時にもっと声を上げるべきだったというもの。 「女性の30代に厄年が重なっているのも、今考えれば納得です。いろんな面できつかった。けれど、私は常に、結構“大丈夫”なふりをしてしまった。これは反省点。声に出さなければ、誰も私が“きつい”ことは理解してくれませんから。でも、どこか傷ついたりしていることってあるじゃないですか。 声を出さなかった自分も悪かったと思うこともあるんです。今は声をあげますが、その時に周囲の空気が張りつめないよう工夫して伝えるようにしています」 「言霊を信じる」という森口さんが、日々言葉を大事にして過ごすなかで、積み上げてきた今がありありと感じられる。 「何事も宣言して、実現してきましたから」と胸を張る。確かに4歳で目指した歌手として今ステージを沸かせているし、ガンダムの主題歌も「歌いたい」ではなく、「歌います」と宣言して、実現させた。 「“言霊理論”で言うと、結婚もそうだったかも」と、独身を貫く我が身を振り返ってくれた。 「私って、これまで結婚については、なぜかポジティブな発言をしてこなかった。大変だろうな、とか、難しいのかなとか。したいと思った時期もありましたが、それほどしたいわけじゃなかったって。実際、大変かどうかなんてわからないですよ、してもいないですから(笑)」 キャリアのなかで、「口に出していること」を必ずといっていいほど実現してきた彼女らしいコメント。その分、「自分の発言にも責任をもっていたい」という。 「インタビュー取材って好きなんです。言葉が残るし、自分の言葉で自分に発破をかけることもできますから」 自分の言葉で奮い立ち、新たな原動力とする。まるで「永久機関」。周囲にポジティブなパワーがみなぎる理由は、彼女のなかにその一端があるのだろう。