“徒弟制”の外科で指導がパワハラにならないために気を付けるべきこととは
◇指導とパワハラの境界はどこに?
こうした調査結果を受けて、亀田氏が登壇し(1)上述のアンケートから自由記述のコメントを検討して現状を確認(2)パワハラの定義と職場における実態を再確認(3)指導における具体的な留意事項とパワハラ被害を受けた場合の対処――について講演した。 アンケートのフリーコメントではまず、指導者側が「パワハラと捉えられたことがある」と感じた具体例がいくつか紹介された。たとえば、▽患者さんへの治療が遅れ、弊害が出たため少し厳しく指導したら○○センター(医療施設内の相談機関)にパワハラだと言われた▽高難易度手術の執刀機会がトレイニー(指導を受ける側)にとっては負担だった▽若手外科医が執刀した患者さんに重大な合併症が発生した直後にプライベートの用事を優先していたため、責任の在り方を指導した際、若手からは権利を主張する声が強かった――などの事例が挙げられた。 また、指導者側が指導する際に以前より意識していることとして、▽ストレートには言えなくなったと感じる▽できるだけ1対1では指導しない▽ハラスメントにならないか留意して、無難なことしか伝えていない▽指導の効果よりもハラスメントにならないことを重視▽訴えられないようにビクビクしている――といったアンケート結果が紹介されていた。 一方、卒後10年未満の指導を受ける側からは、約86%が▽威圧的な言動や態度の表現▽侮辱や軽蔑的な言葉の使用▽職場内でのうわさや陰口――などのパワハラを指導医や上司から受けたことがある、と回答。うち9割以上は「ハラスメントを受けたが耐えた」とした。亀田氏は「ハラスメントを受けた人はどうしてよいか分からない状態で、まず耐えるというのが普通の反応です」と解説した。 「指導」と「パワハラ」の境界については▽愛情の有無▽本人たちの関係次第▽育てようとする意思の有無▽こちらが指導と思っていても、パワハラと捉えられればパワハラ。境界はない▽指導される側の性格ややる気などを踏まえたうえでの、個々に合った“オーダーメイド指導”が必要になっていると感じる――といった意見が出された。 「どうすればパワハラをなくせるか」との質問には▽意識改革と教育▽システムの構築▽職場環境の改善▽世代交代とリーダーシップ――といったアンケート結果が紹介された。