「田園回帰1%戦略」とは? 定住推進へ大阪で講演会
「人口とは抽象的な数ではなく人生の数」
藤山教授は講演で人口予測プログラムに基づき、いろいろな地区の定住推進事例を引き出しながら、田園回帰1%戦略の有効性を訴える。過疎の村が劇的によみがえる感動的事例に、参加者も大きな関心を示すが、藤山教授自身、冷静さを失わない。 「人口とは抽象的な数ではなく、人生の数。それぞれの人生を紡ぎ合っていける場所を、都市でも田園でも、ゆとりを取り戻す中で作り直してほしい。行政などが3年で成果を上げたいなどと急ぎがちですが、長い間のひずみを簡単には解消できない。田舎暮らしはたいへんですが、手間をかけたものしか心に残りません」(藤山教授) 最先端のドローンも登場して、意外な役割を担う。 「田舎でドローンを飛ばして上空から撮影すると、おじいちゃん、おばちゃんが食い入るように見てくれる。わたしが守ってきた森や田んぼがこんなに美しいのかと。自分たちが手入れをして守り続けてきた大地で暮らすことは、田舎で生きる人たちの特権です」(藤山教授) 定住希望者は人生をかけるにふさわしい再出発の舞台を真剣に探している。受け入れ先の人たちと定住希望者が交流を重ね、時間をかけて地域になじんでから定住すると、定住が成功する確率が高まるという。 大規模団地での住民の急激な高齢化など、都市もまた人口問題で悩みを抱える。藤山教授は講演に関連した本サイトの取材に対し、「大阪はミニ東京を目指さず、独自性を再構築した上で、歴史的つながりの深い西日本のパートナー都市になってほしい」と注文を出す。都市と地方が共生するためのパラダイム転換が、ゆっくりだが確実に起きつつあるようだ。 (文責・岡村雅之/関西ライター名鑑)