「田園回帰1%戦略」とは? 定住推進へ大阪で講演会
地産地消の循環型経済システムに転換
「田園回帰1%戦略」とは? 定住推進へ大阪で講演会
過疎に悩む地域で住民数の1%に相当する定住者を毎年迎え入れ、地域外に流出している所得を1%ずつ取り戻すことで、地域の人口が維持でき、暮らしや経済が継続的に成り立つ。島根県で実証され始め、定住推進による地域活性化の切り札として全国的に注目を集める「田園回帰1%戦略」をテーマとした講演会(主催・大阪ふるさと暮らし情報センター)が、大阪市中央区のシティプラザ大阪で開催された。若い世代だけに限らず、幅広い世代の定住者を受け入れてバランスの取れた人口構成とし、小さくても喜ばれる仕事を組み合わせて地域に貢献できる雇用を生み出し、地産地消の循環型経済システムに転換することで、人間らしく生きられる社会を築き直そうという考え方だ。
毎年人口の1%の定住を増やすと人口数は安定
「田園回帰1%戦略」を提唱する研究者は、島根県中山間地域研究センター研究統括監を務める藤山浩(ふじやま・こう)島根県立大学連携大学院教授。同センターで過疎の実情と向き合う中、独自の人口予測プログラムを開発した。 5年前と現在の男女5年刻み人口を入力するだけで、現状のまま推移した場合の人口の将来予測とともに、人口安定化の実現に向け、どの世代で毎年何組の定住を増やせばいいかという処方せんも判明する。 このプログラムの特色は、地域を見つめるきめ細かい視点だ。対象地域は人口が万単位に及ぶ市町村ではない。定住の舞台となる小学校区や公民館区などの一次生活圏まで地区を限定し、数値を入力していく。集落がいくつか点在し、人口が数百人から2千人前後という住民が日々生活し愛着を感じるエリアまで対象地域を絞り込む。 同センターが島根県中山間地域の全227地区で調査したところ、合計1251世帯・2920人の定住を増加させれば、全地区で人口安定化が可能となることが分かった。同地域には約29万8400人が住んでおり、2920人は1%弱に相当する。 人口安定化に必要な定住組数は地区によって異なるが、12地区で構成された県中部の邑南町(おおなんちょう)では、半数の6地区で各世代1組(合計3組)以下の定住増加で十分。継続的な定住推進策が功を奏し、すでに人口安定化を達成した地区もある。「世代で1組」などの身近な目標が、地区住民たちの意欲向上につながるようだ。