愛すべきマイペース、寛一郎「もうこの仕事、やりたくないと思ったことは何度もあります」
アイヌについての映画を残すことができるのはとても素敵なこと
── 『シサム』では、江戸時代前期に、当時、「蝦夷地」と呼ばれた現在の北海道を領有した松前藩の若き武士・孝二郎を演じています。アイヌと交流し、異なる文化や風習に触れることで、アイヌの持つ精神や理念に共鳴してゆく難しい役柄ですが、オファーを受けた時の印象は? 寛一郎 もともとアイヌに対して興味はあったんです。というのも、小学生くらいの時に、アイヌのとある集落に2週間くらい訪れたことがあって縁だなあと感じました。 アイヌについて、よくご存知の方もいるでしょうし、まったく知らない人もいるでしょう。そんななか、日本の文化を語るうえで欠くことができないアイヌについての映画を残すことができるのは、それはとても素敵なことだと思っています。 ── 40日ほど、北海道の白糠町で撮影していたと聞いています。大変だったのでは? 寛一郎 「大変だったでしょう?」と言っていただくことが多いのですが、過ごしやすい気候で食べ物も美味しくて(笑)。空気もいいし、いい環境でのびのびと撮影させてもらいました。
── 役作りはいかがでした? アイヌの文化を知ることで、自分の価値観が変わっていく若き武士を演じるにあたり大切にしたことはありますか。 寛一郎 そうですね、僕は時代劇に出演させてもらうことが多く、そんななか最近、よく考えることがあるんです。今回の『シサム』もそうですが、時代劇に出演する時は、当然ながら歴史的な背景を学びます。でも、その映画を作るのも、その映画を観るのも、その時代の人ではなく、今日を生きている人ですよね。 その場合、必ず史実との衝突があり、史実そのままに作ってもエンタテインメントとして成り立ちません。『シサム』でいうと、僕が演じた孝二郎は、アイヌの人に助けられたことで、アイヌとの交流を深め、価値観を変えていくわけですが、あの時代の武士なら助けられる前に切腹しているのかなとも思うんです。 だから歴史的事実をしっかり学び、最大限のリスペクトを払いつつ、今日の価値観をベースに作るなど、現代社会とリンクさせる必要があります。本作に限ったことではありませんが、そのギャップを、いかに自然に、違和感なく表現するかを大切にしています。