政権崩壊で対シリア軍事行動強める イスラエル、占領地要衝で越冬指示 「一時的」主張も長期化の恐れ
イスラエルが隣国シリアのアサド政権崩壊を受け、シリアへの軍事行動を強めている。 各地のシリア軍拠点を空爆した他、占領地ゴラン高原では両国間の合意に反して緩衝地帯に進入した。自衛のための「一時的かつ限定的なもの」(イスラエル外務省)と説明しているが、長期化の恐れもある。 【ひと目でわかる】ゴラン高原 イスラエルのカッツ国防相は13日、シリア南部を見下ろす緩衝地帯北部の要衝ヘルモン山の山頂に冬を越えて駐留し続けるよう軍に命じた。首都ダマスカスまで約40キロの地点だ。 イスラエル外務省は7日、過去24時間に、武装勢力が緩衝地帯で停戦を監視する国連兵力引き離し監視軍(UNDOF)を攻撃したのをきっかけに軍が同地帯に進入したと主張。ネタニヤフ首相は8日、同日のアサド政権崩壊により第4次中東戦争(1973年)後の合意は「破綻した」と軍事行動を正当化した。10日にはカッツ氏がシリア南部に「非武装地帯」を作るよう軍に指示した。 米CNNテレビなどによると、シリアへの空爆は10日までに480回に上り、その後も連日のように実施されている。標的は主に軍施設や武器庫で、兵器などがテロ組織に流出することを警戒した措置とされる。 背景には、体制移行期の混乱に乗じ、イスラエルを敵視するイスラム過激派がシリアを拠点化することへの警戒感がある。ネタニヤフ氏の側近だったアミドロール元首相補佐官は、イランが支援していたアサド政権の崩壊やレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの弱体化を念頭に「イランが築いた枢軸が崩壊した今、シリアで国際テロ組織アルカイダなどが力を増すのを防がなくてはならない」と説明する。 一方、政権の移行がスムーズに進まなければイスラエル軍の駐留が長期化する懸念もある。シリア暫定政府を主導する旧反体制派「シャーム解放機構」(HTS)指導者ジャウラニ氏は14日、「シリアは長年の戦争で疲弊し、新たな紛争を起こすことはできない」と述べつつ、イスラエルの軍事行動を批判した。