女子バレー、久光を3冠に導いた中田久美監督の意識革命
女子バレー、Vプレミアリーグの久光製薬スプリングスが三冠タイトルを獲得した。 11月から4月まで、5カ月に及んだVリーグの制覇に加え、昨年末の天皇杯皇后杯全日本選手権、そして5月1日からの黒鷲旗全日本総合バレーボール選手権。バレーボールの主要国内大会をすべて制したのは、女子チームとして初めての快挙だ。 新鍋理沙や狩野舞子などロンドンオリンピックで銅メダルを獲得したメンバーに加え、岩坂名奈、平井香菜子、石田瑞穂、座安琴希などワールドカップや世界選手権への出場経験を持つ選手も多く擁する。能力が高く、経験も豊富な選手がこれだけ揃っているのだから、この結果も納得と言えば納得なのだが、これまでの久光製薬は決勝の常連であるにも関わらず、最後の一発勝負が勝ちきれずにいた。 あと一歩が破り切れないチームを、いかに勝たせるか。 その課題に挑んだのが、今季から監督に就任した中田久美だった。 ご存知の通り中田監督は、15歳で天才セッターとして全日本メンバーに選ばれ、ロス五輪の銅メダリストメンバー。ソウル、バルセロナ五輪と出場して引退後は、イタリアのプロリーグでのコーチ経験を得て、久光の監督となった。 昨年からコーチとしてチームに加わっていた中田が、監督就任後、選手達に最初に伝えたことはシンプルだ。 「今年は優勝しかない。このチームは勝てば必ず変わる。大きくて、動かない石を全員で動かすように、全員で今年は必ず優勝します」 基本練習に時間を割き、1本のパスから精度にこだわった。レシーバーはスパイカーの動きを見ながらパスの高さを変え、セッターはアタッカーが最も得意とする場所にトスを上げ、スパイカーはそのトスを信じて思いきった助走で攻撃に入る。各々が勝手に動くのではなく、中田監督が「ワンフレームに収まるようなバレーが理想」と言うように、自分のプレーのみならず、その後のプレーまでつながる動きや技術の精度を選手に求めた。 これまでは、多少乱れることがあったとしても、次のプレーで修正できれば結果オーライとし、互いを責めることはしなかった。だがその甘さを、新指揮官は容赦なく指摘した。 「できる、できないは問題じゃない。なぜできたか、なぜできないか。その“なぜ”が自分でわかっているのかどうかが重要なんです」