「自分探しの旅」は必要ない…「6年で年商43億円」アパレル会社を興した30歳社長の「やりたいことの探し方」
将来の夢やなりたい職業を見つけるにはどうすればいいのか。20代でアパレル会社「yutori」を立ち上げた代表の片石貴展さんは「自分の好きなことを抽象化していくといい。『自分探しの旅』で自分を無理に別の場所に置く必要はない」という――。 【この記事の画像を見る】 ※本稿は、マイナビ健康経営のYouTubeチャンネル「Bring.」の動画「『信じることが真実だ』。人生を最高のものにする『やりたいこと』の見つけ方」の内容を抜粋し、再編集したものです。 ■好きなものを「抽象化」する 【澤円】自分の「やりたいこと」をどのように探していけばいいのかという永遠のテーマについて、片石さんはどう思いますか? 【片石貴展】自分の「やりたいこと」が、自分の「好きなもの」と関連していると捉えると、わたしには小さい頃から「好きなもの」がたくさんありました。小学生のときの漫画にはじまり、音楽、ファッションと変遷していき、そこからさらに、サブカルチャー全般に興味を持ちました。そのなかで大学時代のバンド活動という実体験も経ながら、少しずつ自分の輪郭がつくられた感覚があります。 同様に、どんな人にも直感的に惹かれるものや、誰かにほめられなくても好きなものがあると思います。そうした「好き」という具体的な体験を「抽象化」することで、その本質を探り出してみるのです。そうすることで、自分の「やりたいこと」を見つけやすくなると考えています。 「好き」という気持ちから集めた情報や知識、体験などは、すべて「やりたいこと」を探すための素材になります。逆にいうと、具体的なインプットが足りなければ、「やりたいこと」もぼんやりして、いわゆる“自分探し”につまずいてしまうのだと思います。
■起業のルーツは『野ブタ。をプロデュース』 【澤円】まずは具体的なインプットが重要になるわけですね。それを基に「やりたいこと」を探っていくときの、片石さんの「抽象化」のプロセスが気になります。 【片石貴展】「好き」という具体的なインプットがあれば、抽象化はそこまで難しくありません。わたしの場合、yutoriを創業したルーツは、実は小学校6年生のときに観た『野ブタ。をプロデュース』というドラマまで辿ることができます。 クラスの人気者の生徒が、いじめられている転校生を学校一の人気者にプロデュースしていくという筋書きのドラマですが、当時は小学生だったので、それを面白いと思う理由なんてありませんでした……(苦笑)。ただ、そのドラマに不思議と惹かれ、とても好きになったのです。 その後、思春期に「好きなもの」や「気になるもの」をインプットしていくわけですが、特にストリートファッションに強く惹かれました。このときも、目の前のものを夢中に吸収していただけです。ですが、「抽象化」という観点で見れば、ファッションは着る人をプロデュースするものと捉えることもできますよね。 ■才能がないからこその「弱者の生存戦略」 また、わたしは当時、世の中の優れたクリエイティビティに触れるなかで、自分に突出した才能がないことを自覚するようにもなっていました。そこで、誰かを巻き込んで自分の立場をつくるという、いわば「弱者の生存戦略」のようなものを本能的に選び取ろうとしていたのかもしれません。こうした体験もまた、プロデュースという視点につながります。 いずれにせよ、『野ブタ。をプロデュース』にはじまる具体的なインプットを「抽象化」することで、「TURN STRANGER TO STRONGER(ハグレモノをツワモノに)」というyutoriの企業理念にまでつながっていきました。まさに、自分の具体的な「好き」から本質を取り出すプロセスを経て、創業の原点になったということです。 いまでもわたしは、yutoriで働く若者たちがクリエイティブなものと接触し、猛烈な勢いで成長していく姿を見るのが大好きです。個人個人の働くスタイルひとつとっても、入社したときとまったく変わっていくわけで、そうした変遷にとても惹かれるのです。