「非情な殺戮マシーン」は過去の話、『ジョーズ』で知られるホホジロザメのプロフィール
世界中の温帯および熱帯の沿岸海域に生息、国際自然保護連合は「危急種」に指定
ホホジロザメは、アオザメ、ネズミザメ、ニシネズミザメなどと同じネズミザメ科に属する。ネズミザメ科のサメの中では最も体が大きく、世界最大の捕食魚だ。 【動画】巨大ホホジロザメ、映像では過去最大級 ホホジロザメという名前は白い下腹部に由来するが、体の上部(背中側)は茶色や灰色だ。コントラストのはっきりしたこの配色は、「カウンターシェーディング」(背中側は深海の暗さに、腹側は水面に降り注ぐ日光の明るさにまぎれて、上からも下からも目立たなくなる)として知られ、多くの魚種はこの現象を生かして周囲に溶け込む。1975年の大ヒット映画『ジョーズ』に登場したのが巨大ホホジロザメだったおかげで、サメの中では特に知名度が高い。 最近、科学者によって、ホホジロザメの皮膚から、体色の濃淡を変える働きがあると見られる「メラノサイト」と呼ばれる特殊な細胞が発見された。一説によると、獲物の下から忍び寄るときに体色が変化して、一層気づかれにくくなっているのかもしれない、という。 魚雷のようなボディに力強い尾ビレを持つホホジロザメは、時速50キロに迫る速度で水中をロケットのように突き進むことが可能だ。このスピードと最大1.8メートルトンもの噛む力で、獲物に瞬時に致命傷を負わせて無力化し、反撃されないようにしている。
歯
ホホジロザメのあの恐ろしい口元には、のこぎり状の長さ約6センチの歯が7列並んでいる。歯の総数は300本ほどだが、大半は噛むのには使われていない。ホホジロザメの歯は、ベルトコンベヤーのようになっていて、日々の摩耗で歯が抜け落ちると、次の歯がそこに用意される。人間の場合、歯の生え替わりは一生に一度だが、ホホジロザメは、生きている限り何度でも歯が生え替わる。 サメ用のおりや、人が作った機械か何かにぶつかるなどして、全部の歯を失ったホホジロザメが報告された珍しいケースも複数ある。だが、そうした場合でも、新しい歯がすぐに生えてくるので、海洋食物連鎖の上位の座を明け渡すことはない、と研究者は言う。