セルフレジ導入が進むアメリカ…それでも「爆発的」には広がりそうにない理由 利用者の67%が不満
セルフレジ導入をためらう動きも
一方で、セルフレジ導入を見直す動きも見られる。アトランティック誌や前述とは別のCNNの記事は、大手の小売業者はセルフレジを再考していると報じている。 例えば、Walmart(ウォルマート)やShopRite(ショップライト)は一部店舗でセルフレジ機を撤去。Wegmans(ウェグマンズ)では客がスキャンして支払うアプリサービスを終了。 Costco(コストコ)も非会員が会員証を不正利用している問題が浮上して以来、セルフレジの人員を増やすなど、各社でセルフ会計を見直す動きが起こっているというのだ。これはアメリカだけにとどまらない。イギリスではスーパーチェーン、ブース(Booth)が28店舗のうち26店舗でセルフレジを廃止し、通常の従業員によるレジを復活させたと報じられた。 これらの動きの背景に、現状のセルフレジ機のさまざまな問題が炙り出される。一般に浸透しているセルフレジ機は操作中にエラーが頻繁に発生し、正しい会計ができなかったり、作業に時間がかかる。人との関わりがなく機械的な作業(顧客体験)になりがちなのもデメリットとされている。買い物客1000人を対象としたある調査では、セルフレジ機の利用者の67%が不満があると回答した。 また店側にとっても導入コストがかかり、定期的なメンテナンス費も必要だ。万引きや不正操作が多いことも以前から問題になっている。アルコールを購入する際のID確認はスタッフが行うため、結局スタッフは機械と客の両方を監視しなければならず、店側の損失も報告されている。 実際のところ、セルフレジ機の導入店の方が、客のミスや万引きによる商品損失がより高いことが判明している。欧米でセルフレジ機や専用アプリの導入企業の損失率は約4%で、業界平均値より2倍以上高いという。 これらの問題や不満解消のために、各企業はさらに進化したセルフレジ機の開発が求められている。
昨秋オープンしたウェグマンズの新店(ニューヨーク市内)では会計セクションのほとんどがセルフレジ。ここでは東芝が開発した最新のセルフレジが導入されている。筆者も操作してみたがエラーもなくかなりスムーズに会計ができた。(c) Kasumi Abe