“縦目のベンツ” 初代コンパクトシリーズのメルセデス・ベンツW114/115(1968~1976年)
1968年、『ニュージェネレーション』のタイトルに乗って登場したのが、メルセデス・ベンツの初代コンパクトシリーズ、Eクラスの元祖「W114/115」である。1968年に発表されたので、/8(ストローク8)と呼ばれた。
W114は2.3L、2.5L、2.8Lの6気筒ガソリンエンジンを搭載したモデルで、W115は2.0L、2.2L、2.3Lの4気筒ガソリンエンジンを搭載したモデルと2.4Lの4気筒ディーゼルエンジン&3.0Lの5気筒ディーゼルエンジンを搭載したモデルだ。
先代のW110(通称:羽根ベン)までは、強いて言えばSクラスに相当する上級クラスを元にして、単に4気筒用にショートノーズ化しただけの造りで、主にタクシー需要を満たすだけに過ぎなかった。しかし、このW114/115では一挙に「オーナードライバー向き」と銘打ち、コンパクトでスタイリッシュな専用ボディを与えられて登場したのだった。結果、最終的な販売台数はW110の3倍に相当する191万9056台に上がった。 特徴は、何と言っても縦目のヘッドライト(!)とスマートになったグリルとのモダンなコンビネーションは、引き締まったボディサイズや最新のテクノロジーが投入され、メルセデス・ベンツならではの高級感を一層際立たせて見せた。
コンパクト・メルセデス「W114」通称 “縦目のベンツ”。
内装のセンスもまさにパーソナルカーの趣きで、待ち憧れていた世界中のファンに好意を持って迎えられた。そして、日本では国産2Lクラスと大して変わらないと言うコンパクトさが、メルセデス・ベンツを身近な存在にした。当時のダイムラー・ベンツ社は、「メルセデス・ベンツのエントリーモデル」と表現し、「オーナーカーに相応しいエンジニアリングの数々を、満を持して投入した」と胸を張った。
グレードは4気筒の200から6気筒の280まで用意され、さらにハードトップ・クーペの250CEや280CEも加わった。このEの接尾辞はドイツ語でEINSPRIZUNGの頭文字で、燃料噴射の意味。280E/280CEでは初のDOHC燃料ポート噴射式エンジンを搭載し、このクーペの放つ趣味性の高さも、その存在を身近に感じさせている。筆者の知人の自動車メディアの代表は、250CE(マニュアルトランスミッション!)をイタリアで購入、輸入してクラシックメルセデスを堪能している。彼に付属のジャッキはビルシュタイン製だと教えてくれた時には驚いたものだ。