競争力より共創力の時代がやってきた 仲間と華麗なパスワークをつくれるかどうか 共創の本質は「カンニング」
【マネー秘宝館】 「時代の先を行く」のは大切ですが、先へ行きすぎるのは考えもの。なぜならみんなが付いてこれないからです。一歩先ではなく、半歩先くらいがちょうどいい塩梅(あんばい)なのです。 私自身も何度となく、そんな経験をしました。10年ほど前に『良い値決め 悪い値決め』(日経ビジネス人文庫)という本を出版したのですが、そのときタイトル決めで一悶着ありました。 私は「プライシング」という言葉を使いたかったのですが、これに対して出版社から「プライシングだとわかりにくいので日本語にしてください」というNG&リクエスト。それで「値決め」とした経緯があります。発売時もそれなりに反響はありましたが、やはり「何それ?」という声の方が多かったですね。今にしてみれば当時プライシングというテーマは「早すぎた」のだと思います。 同じく10年前、友人の仲山進也氏が『あの会社はなぜ「違い」を生み出し続けられるのか 13のコラボ事例に学ぶ共創価値のつくり方』(宣伝会議)という本を出版しました。私見ですが、この本のテーマもまた「早すぎた」ように思います。 競争より共創――。相手と競って勝つのではなく、共につくり出すこと。そんな「共創」を目指し、成功させることが大切なのはまさに「今」です。 自分の能力・スキルを高めてライバルを蹴落とす。それができればいいのですが、もはや無理です。それよりも仲間と補い合って一緒にビジネスを育てた方がいい。 そんな「共創」の大切さを頭でわかっていても、体がついていかない個人・会社が多いようです。その自前主義の原点は、やはり「試験」ではないかと私はにらんでいます。 ライバルより1点でも高得点を取ることによって合格の栄冠を得る試験。そこで勝ち続けるエリートに「たった1人で努力する」気質が多いのはむべなるかな。 これに対し、共創の本質は「カンニング」です。答えや勉強の仕方を教え合うこと、それが共創をつくるわけですが、試験合格でのし上がってきたエリートはこれが苦手なんですよ。大きな声では言えませんが、難関資格を突破して独立開業した会計事務所や法律事務所の先生方には、いまだ「客の取り合い」をしている例が少なくありません。 自分自身の能力・スキル・技術力は高いのに、他者と組むのが下手な人がいます。つまり競争力は高いけど共創力が低い人。これまでは競争力だけでドリブル突破できましたが、これからは難しいでしょう。仲間と華麗なパスワークがつくれるかどうかが重要。