生成AIは「鉄腕アトム」になれるのか? 東大・東工大教授が語るAI研究の最先端
┌────────── 自動車が生まれた時にはまだルールもありませんでしたが、とても便利なので馬車に代わる移動手段として瞬く間に普及しました。その間に、免許・制限速度・道路標識などの整備が進み、今に至った。今でも死亡事故はありますが、メリットの方が大きいので使われています。ChatGPTも同様にルールを作りながら使っていくべきです(松原氏) └──────────
現在、AI研究者の目標は汎用人工知能(Artificial General Intelligence)を実現することだという。つまり、「自然な翻訳をする」「将棋で名人に勝つ」といった個別のタスクに特化したAIではなく、人間のような汎用的な知能をもつAIを作ることだ。GPT-4だけで汎用AIを実現するのは難しいが、その足がかりになるのではないかと考えられている。 ■ フレーム問題 また松原氏は、AI研究で古くから言われている問題を2つ紹介した。まず、1969年に人工知能研究者のJohn McCarthy(ジョン・マッカーシー)とPatrick J. Hayes(パトリック・ヘイズ)が提唱した「フレーム問題」だ。
これは、「ある問いに対して関係のある事柄だけを選び出すことができない」という問題のこと。AIは一般に「どこまで考えればいいのか」を学習しておらず、膨大な情報を全て計算しようとすると、時間がかかったり、記述の量が増えたりする。 ┌────────── これは人間も同じです。たとえば『人に迷惑をかけるな』といっても、『迷惑』や『常識』の囲みが人によって違うので、私は迷惑だと思っている、私はそうは思っていないといったズレが生じる。 生成AIは色んな問題に対して適切に答えるので、フレーム問題に対応しているという意見もありますが、私はそもそも『フレームを囲っていない』というのが正しいと思っています。ただし、生成AIがこれを突破するためのヒントとなることは間違いないです(松原氏) └────────── ■ 記号接地問題 次に、1990年に認知科学者のStevan Harnad(スティーバン・ハーナッド)が提唱した「記号接地問題」だ。これは、「記号で指し示されるものと実世界の実体・概念とをどう結びつけるか」ということ。たとえば、「リンゴ」という記号と実際のリンゴ(食べる、赤い、酸っぱい)は、人間の中では接地(グラウンディング)しているが、AIは辞書的な意味を知っているだけで、人間のようには認識できないという問題だ。