生成AIは「鉄腕アトム」になれるのか? 東大・東工大教授が語るAI研究の最先端
同時に言われ始めたのが、「プロンプトの最適化」だ。大規模言語モデルに与える「テキスト(=プロンプト)」さえ工夫すれば、言語モデルのアーキテクチャを変更せずにタスクを解けるのではないか、と2020年の論文で指摘された。
興味深い研究として、「指示チューニング」がある。これは、「指示」として説明されているタスクのデータを大量に学習させ、言語モデルをファインチューニングすることを指す。 ┌────────── 質疑応答型の簡単な問題を与え続けた結果、急に要約の問題が解けたり、翻訳の問題が解けたりと、タスクを横断して対応できるようになるという現象が起こりました。これが、今の言語モデルが汎用的に振る舞うための原動力になっています(岡崎氏) └──────────
手塚治虫が現代に蘇る? 生成AIが漫画をつくる時代に
続いて、リレートークは松原氏にバトンタッチする。同氏は「生成AIはAI研究をどこに導くのか」をテーマとして講演を行った。 ディープラーニングが話題になる前から、小説、脚本、マンガなどを生成するAIの研究を行っていたという松原氏。現在は、星新一のショートショートを研究してAIに小説を書かせるプロジェクトや、俳句を詠む人工知能「AI一茶くん」の開発にも携わっているという。 AI技術を用いて手塚治虫を現代に蘇らせようという「TEZUKA2020 プロジェクト」。手塚治虫の過去のマンガから新キャラクターとシナリオの候補をAIに生成させ、残りの作業は人間が行って、2020年のモーニングに掲載された。 また現在は、「TEZUKA2023」として、AIを用いてブラックジャックの新作を作るというプロジェクトも行われている。
生成AIはAI研究における難問を克服できるのか?
言うまでもなく、生成AIは現段階でも非常に優れた能力をもっている。アメリカの司法試験・医師国家試験ではどちらも合格点を取っており、文系理系問わず知能が高く、ある程度の汎用性があるといえる。
┌────────── 一方で、ロボット研究者からは『空間認識能力が弱い』とも言われています。言葉だけで世の中を学習しており、目と耳を持たないので仕方がないですが……(松原氏) └────────── 松原氏は、生成AI技術の進歩について、「自動車の発明」にたとえて説明した。