横浜DeNAが成功させた新球団経営戦略。ビールでチームを強くする?!
横浜DeNAベイスターズが画期的な球団経営戦略に挑戦、大成功を収めている。日本球界初となるビール事業の成功だ。横浜DeNAベイスターズは、人気のクラフトビールを開発、2種類のオリジナル醸造ビールを球場内と場外のライフスタイルショップ「+B」などで販売しているが、観客動員のアップ比率以上に売り上げは好調。すでに4億円近くの売り上げを計上しているという。 各球団の経営スタイルは大きな変貌を遂げて、巨人戦を軸にしたテレビの放映料型はとっくの昔に崩壊しているが、割合さえ変われども、チケット、スポンサー、放映料、物販等の4種類が主な球団の収入である。今回、ベイスターズは、この物販等の収入をさらに広げて、まるでビールメーカーのような事業をスタートさせ大きな売り上げを作ることに成功したのである。約4億の売り上げのうち利益は25パーセントから30パーセントだというから約1億円以上の儲けが出ることになる。今季で言えば4番、筒香嘉智(24)一人分の年俸に換算されるような大きなプラス収入である。 これも1月に終了した横浜スタジアムの公開買い付けにより実現した球場と球団の一体経営のたまもの。これまでの経営形態では、球場での物販はすべて球場の収入となっていたため、球団のオリジナル飲食を企画販売する意味がなかったが、球場と球団の一体経営となると話は違う。早速、新経営の利点を生かしたのがこのビール事業で、池田純・球団社長も「ビールが球場、球団一体経営の象徴かもしれませんね」という。 そもそもクラフトビールの分野に池田社長が目をつけたのは2年前だという。 「社長になったときから球場専用のビールができないのかなと考えていました。メジャーリーグだけでなくブラジルやドイツのサッカーなど世界中のスタジアムを調べましたが、だいたいスポンサーの絡みで契約しているビールと地場のビールを売っているんです。アメリカのポートランドでプロのサッカーを見たときには、近くにベースキャンプというビールメーカーがあって、お洒落なビールを売っていました。《キャンプで飲むビール》と打ち出したオケージョン(機会、場所を特定した)ビールです。では、野球を見ながら飲むオケージョンビールってありじゃないか? 美味しいビールを作ればチャンスがあるんじゃないか、と考えたんです。しかも、ビールの本場であるドイツでも、クラフトビール の流れがありました。たぶん日本でも、その大きな流れが来るとも考えたんです」 昨年から横浜ベイブルーイングとタッグを組み、オリジナル醸造ビール「BAYSTARS ALE」の製造、販売を実験的にスタートした。球場の経営権がない昨年は、イベントや場外の「BALLPARK COFFEE」でしか販売できなかったが、これが好評だった。 「本物じゃなくては駄目だと考えました。私自身もクラフトビールをたくさん試飲して研究しました。クラフトは、エッジが利いたものが多くて、ちょっと好き嫌いが激しくなるんです。でも、年間約180万人の方々に来ていただくスタジアムですから、“みんなに親しんでもらえるビールにならないと駄目だ”と考え、選手の意見も取り入れながら、万人向きに気楽に飲める味に調整しました」(池田社長)と、選手らにもアンケート、試飲をしてもらいながら、涙ぐましい試行錯誤を繰り返して、まさに手作りで“本物”を完成させた。 昨年までは球場内で売れなかったため販売規模もたかが知れていたが、球場をM&Aしたことで、今季から場内発売が可能になった。定価も700円に抑え、同時に低温で長時間醸造させ、すっきりした飲み口が味わえる「BAYSTARS LAGER」も追加。本格的なビール事業が始動したのである。