横浜DeNAが成功させた新球団経営戦略。ビールでチームを強くする?!
さらに池田社長は、こうも続けた。 「お客さんを増やし、チームの収入を増やして、それをチームに還元するのが僕の仕事ですし、それによってフロントとチームの間にもプロとプロの信頼関係が生まれるんだと思うんです。筒香も打っています。今オフに年俸が大幅に上がるでしょう。プロ野球は夢のある世界です。ビールの成功だけでなく、観客動員も順調に伸びていることもあって、筒香の期待に応えられる提示ができるくらいの余力が球団経営に出来てきました。まだ、すでに凄い額を出せている球団ほどではありませんが、好循環が生まれ、球場が盛り上がっています。もう出ていきたいと選手が考える球団ではなくなっています」 現在、筒香は36本で本塁打タイトル争いでヤクルトの山田哲人に3本差をつけ独走中。打点も2位につけて2冠が視野に入っている。年俸は、昨年オフにやっと1億円プレーヤーの仲間入りを果たしたばかりだが、池田社長が《筒香の期待に応えられる提示》と断言するのだから、このまま順調に進めば2億円突破は間違いないだろう。 経営権を得て5年。やっとクライマックスシリーズ出場の現実味が出てきた。26 日からの巨人3連戦では、同一カード3連勝。3位の死守どころか、4位のヤクルトとは2.5差、2位の巨人にも4.5差と迫り、2位浮上さえ圏内に入っていた。昨季、球宴後に急降下してしまったチームに比べると確実に力がついている。 「いい流れになっているとは思います。ファンの方々に“ベイスボール”“横浜クリニック”と残念がられてきたような野球はやっていません。上位と肩を並べるくらいのラインには来ています。 チームの空気はトップが作ります。ラミレス監督は負けても暗い空気は作りません。ラミレス監督は、孤独に強い人です。私も外国にいたことがあるのでよくわかりますが、異国で一人になるのは孤独なものです。日本のプロ野球に来て、最初は苦しみながらも、対応して孤独に打ち勝ち、あれだけの成績を出した人です。そこにも期待をして監督招聘したわけです。4月に負けが込んだときに《いつか参った顔をしてしまうんじゃないか》と見ていましたが、その姿も見せずにぶれない姿勢をつらぬきました。 経営者と一緒なんです。勝ったときは、何も言わない方がいい。コーチングがうまくいっているなら放置、駄目なところだけにマイクロマネージメント(部下への強い干渉)をすればいいんです。それができています。勝っているときは、グッドジョブで終わり、負けているときは、《あそこはどう考えていたんだ?》《なぜああなったんだ?》と、問題、原因に干渉しながら対応策につなげていく。ラミレス監督は、理想的な経営者に近いマネージャーだと思って見ています。 そして私たちも現場介入ではなく、チームにかかわっていくのは当たり前のことで、あっちこっちの空気をよくするのが仕事だと考えています。それが信頼関係ですから」 横浜DeNAベイスターズが球界に新風を吹き込んでいる新たな経営戦略。チームのゴール地点と共に、その行方に注目したい。まだまだビールの季節は終わらないのである。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)