横浜DeNAが成功させた新球団経営戦略。ビールでチームを強くする?!
昨年の球場の物販の売り上げで言えば、ビールは約8億円もの市場があった。しかも利益率が25から30パーセントと高い商品である。それでも、これまで場内で販売していた他社のビールと共存できるように、「シェアは、30から40パーセント程度に抑え、ビール全体のパイを押し上げたかったんです。まず一杯目にラガー、二杯目にエールと、ビールの杯数を増やしてもらいたいと考えました」と池田社長は言う。 結果、昨年まで1試合で1人あたり2.2杯から2.3杯だったビールの消費量が、今季は2.6杯から2.8杯に跳ね上がった。ビール全体の売り上げも前年比で30パーセントアップ。球場で販売されている4社6ブランドの中でのビール占有率も、6月は32.4パーセントで、当初計画したマーケティング通りに運びビール事業は大成功した。球宴期間中には、「ベイスターズのビールではなく、横浜のボールパークが誇るオリジナルビール」という売り出し方をして、ベイスターズファン以外にも好評を得た。場内の生ビールだけでなく、瓶ビールも発売、横浜圏内でも広告展開をしている。おまけにビール関連のキャップや栓抜きなど付属商品まで売れているという。 「オリジナルビールを楽しみに球場へ」という観客動員誘導の形も取り入れ、8月には期間限定で特別販売ショップ「BAY BEER HOUSE」も場外に作った。 球団経営の“新しい金脈”を掘り起こした横浜DeNAベイスターズのビール事業は、球界全体に衝撃を与えたが、ファンからすればもうひとつの関心がある。その儲けたお金をチーム強化に使ってくれるのですか? との要望と疑問だ。スポーツエンターテインメントビジネスの基本は、利益のファンへの還元である。チームの成績と観客動員は比例するとされていたが、横浜DeNAベイスターズは、ここまでチーム成績に関係なく、営業努力と戦略で飛躍的に観客動員を増やしてきた。それでも爆発力を生むには、チームの強化、成績が必須である。 ビールの儲けをチーム強化の投資にまわすのはいつ? 池田社長にその質問をぶつけると、「すでにビールで儲かった分は外国人補強に使っていますよ。当たり外れは、横に置いて欲しいのですが、シーズン途中に3人の外国人を補強しました。今季は8人となっています。今までは、せいぜい4、5人でしたから。外国人の総年俸で言えば、ブランコがうちにいたときが高かったですが、今ではそのときに近いぐらいになっています」と言う。 シーズンに入ってから、中継ぎ左腕の強化に元広島のマイク・ザガースキー(33)を獲得し、新外国人のジェームズ・ロマック(30)が、打率1割台に低迷、日本野球に適応しないとみるや、エリアン・ヘレーラ(31)の獲得に動いた。64試合に出場、打率.212、3本、24打点。この数字ならば日本人選手にチャンスを与えた方がいいとも思うが、終盤戦に向けての中継ぎ強化にマイク・ブロードウエイ(29)を7月に緊急補強している。