立ち飲み「晩杯屋」はなぜ安い?「人件費は抑えていない」驚きの店舗運営術に迫る
あえて“値下げ”したワケは…
さて、取り皿も、グランドメニューもない晩杯屋だが、無料のおしぼりもない。必要ならば70円で購入することになる。ここにも同社の理念が現れている。 「無料で全てのお客様に提供すると、それも価格に上乗せされることになります。つまりおしぼりを使わない方にも、おしぼり代を払ってもらうのと同じことじゃないですか。ただ、有料にするからには良質なものを提供したく、新幹線のグリーン車でもらえるものと同様のコットン製です」 驚くことに2022年10月に一部の酒類を“値下げ”までしている。それが実現された背景を鈴木氏に聞くと、周囲への感謝と支え合いの思いが垣間見えた。 「実はその月、大手ビールメーカーを中心にあらゆるお酒の価格が一気に上がったんです。そのため、弊社もドリンクメニューの価格改定を余儀なくされました。ただ、一部の日本酒と果実酒は値上げがありませんでしたその心意気に応えたくて、お店での販売価格は値下げして、よりたくさんの人に飲んでいただけるようにしたんです」
今後は未進出の地域に出店も
コロナ禍では他の飲食店同様に売り上げが大幅に落ち込んだ。しかし、それ以上に辛かったのは別の部分だったと鈴木氏。 「我々のようなお酒を出すお店が、社会全体から“悪者”として扱われたのが一番辛かったですね。働くのは、生活やお金のためでもありますが、社会になにか貢献できているという思いがないとやりがいが持てません。それが逆に、嫌われ者になってしまうのは苦しいものがありました」 コロナが5類に移行されてからは、売り上げももどりつつあるとのこと。将来的には、まだ未進出の地域への出店も目標としているそうなので、「近所にない」と嘆く方には朗報だ。誰もが気軽に足を運べる憩いの場として、いつまでも賑わい続けてほしいものだ。 <取材・文/ Mr.tsubaking> 【Mr.tsubaking】 Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。
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