褒められたいし、労われたい! 報われない主婦の魂の叫びがこだまする『主婦の給料、5億円ほしーー!!!』【書評】
育休明けからの職場復帰について友人と語り合うのって、意外と気が引ける。なぜかというと、職場環境は千差万別だから。休みの取りやすさ、同僚たちのまなざし、上司の理解度… すべてが一致することはなかなかありえない。だからそんな職場復帰の苦悩を綴った本作を見つけたときには「これこれ~! こういう話が読みたかったし聞きたかった~!!」と小躍りしたものだ。 【漫画】本編を読む
『主婦の給料、5億円ほしーー!!!』(鳥谷丁子/KADOKAWA)は、アラサー主婦の鳥谷さんが第1子「坊やマン」の出産を経て感じた、家庭と仕事との両立の中に潜む「見えない苦労」を描いたコミックエッセイ。主婦業の報われなさにがっくりと肩を落とし、時に絶叫、時に爆発しながら奮闘する日々がレポートされている。 第2子「お嬢さん」の誕生を中心にした続編、『主婦の給料、5兆円ほしーー!!! 家事も育児もさらにパワーアップ編 』も発売中だ。
冒頭でも紹介した通り、わたしは鳥谷さんが職場と家庭の板挟みで苦悩する姿に大いに共感させられた。出勤も欠勤も子どもの体調に左右され、仕事に思う存分コミットできない申し訳なさで押しつぶされそうになる。育休明けはお給料も減っているので、保育料と比較すると働く意味があるのだろうか? と悶々とする。 そんな切実な苦悩に共感しながら、通勤ラッシュの駅のホームでほろりとしてしまった日もある。こんなに辛い世界が待っていたなんて、知らなかったんだよ…。そういう絶望を、鳥谷さんは茶目っ気たっぷりに描いていく。仕事と育児の両立に悩んでいるママさんには、ぜひとも目を通していただきたい部分だ。
「見えない苦労を可視化する」は本作の大きなテーマだ。鳥谷さんは主婦になってやっと理解できたことが多いと綴っている。そのひとつは母親の苦労。母親から当たり前に享受してきた愛は当たり前でなく、母の努力や無償の愛の上に成り立っていたこと。だけどそれは辛いことではなく、ただ目の前のわが子の幸せのためにできることを考えていたこと。 子育てに奔走していたかつての母親の立場を身をもって体験したことで、感謝を忘れずに生きていくことを鳥谷さんは誓っている。