「不器用な天才指揮者」西島秀俊にかけた言葉がすごすぎた…西田敏行(享年76)が“最後の連続ドラマ”で見せた姿とは
10月17日に76歳で亡くなった、俳優の西田敏行さん。これまで、それぞれ100近い映画・ドラマに出演してきた。濃密な俳優人生で演じたさまざまなキャラクター、“最後の連続ドラマ”となった作品で見せた姿とは。ドラマウォッチャーの明日菜子氏が振り返る。 【画像】西田敏行さん、最後に出演した連ドラでの車いす姿 ◆◆◆
映画やドラマだけでなくバラエティー番組や日俳連理事長としても活躍
その悲しい知らせを聞いたとき、どんな姿が頭に浮かんだだろう。故・三國連太郎さんとの軽妙な掛け合いが光る『釣りバカ日誌』シリーズ、宮藤官九郎作『タイガー&ドラゴン』(TBS系)や『俺の家の話』(TBS系)、『翔ぶが如く』(NHK総合)をはじめとする数々の大河ドラマ、はたまた涙もろい『探偵!ナイトスクープ』の局長としての姿か――。 2024年10月17日、俳優・西田敏行さんが亡くなった。近年は座ったままの作品が多かったものの、生命力あふれるあの芝居をずっと見つづけていただけに、76歳での幕引きはあまりにも早いと感じてしまう。画面越しにその姿を眺めていた自分の心にも、ぽっかりと大きな穴が空いたようだった。 西田さんの活躍は、映画やドラマだけにとどまらず、NHK紅白歌合戦やバラエティー番組など、多岐に渡る。その一方で、日本俳優連合の理事長としても約16年間、俳優の権利や地位向上に尽力した。 日本俳優界の重鎮でありながら、日本における俳優の扱いに常に疑問を持ちつづけ、Me Too運動や公的補助が進む海外の事例を取り入れようと働きかけた。コロナ禍やインボイス制度の導入など、俳優界にとっては、特に厳しい状況がつづいているが、西田さんは声を上げることをやめなかったのである。
「西田さん以外なら誰が演じられただろうか」と思わせる演技
訃報を聞いたとき、まず最初に浮かんだのは、映画『ステキな金縛り』(2011年)で落ち武者・更科六兵衛を演じている西田さんの姿だった。 負けっぱなしの三流弁護士・宝生エミ(深津絵里)は、とある殺人事件を担当することになった。現場の証拠は依頼人の犯行を示しているものの、本人は「金縛りで動けなかった」と信じ難いアリバイを主張している。しかし、依頼人が宿泊した旅館でエミも同じように金縛りに遭い、事件当夜に依頼人の上に乗っていた落ち武者の幽霊・更科六兵衛(西田敏行)と出会う。謂れのない罪で裁かれようとしている依頼人に同情した六兵衛は、証人として出廷することを決意。こうして前代未聞の裁判が幕を開ける。 脚本・監督を務めた三谷幸喜氏が「西田さんが自由に弾けられる役をやってもらいたかった」と語る更科六兵衛は、西田さんならではの“貫禄”と“チャーミングさ”が共存する唯一無二の役どころだ。西田さん以外なら誰が演じられただろうかと考えてみると……ちょっと想像がつかない。 落ち武者ヘアーでも顔面蒼白でも、どこか愛らしさが滲み出ているのが西田さんならでは。証人尋問に答えるために笛ラムネをピーピー吹いたり、某キムタクを彷彿とさせる「ちょ、ちょ待てよ」というセリフは、やはり西田さん本人のキャラクターあってこその設定だろう(もしかしたら西田さんのアドリブかもしれない)。本作を観たことがある人は、大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK/2022年)で西田さん演じる御白河法皇が、源頼朝(大泉洋)の夢枕に立ったシーンにも、クスッとしたのではないだろうか。 『ステキな金縛り』は、いわば“へっぽこバディ”が難事件に挑む物語である。エミは後がない崖っぷちの弁護士で、頼れる証人は落武者の幽霊だけ。かつては六兵衛も、背任の疑いをかけられて亡き者にされた背景がある。厳しめの表現を使うならば、エミも六兵衛も世間から必要とされていない者同士なのだ。