「不器用な天才指揮者」西島秀俊にかけた言葉がすごすぎた…西田敏行(享年76)が“最後の連続ドラマ”で見せた姿とは
しかし、真相究明に奔走する彼女を一番近くで見守っていた六兵衛は、エミが本当は知恵も勇気もあることを知っている。この難しい依頼をやり遂げる力があることも知っている。そんなエミを信じて、六兵衛はただ一言「自信を持ちなされ」と彼女を送り出す。誰にも期待されていなかったエミが、ロジカルかつ大胆に真実に迫っていく最終局面は、何度見ても胸が熱くなる。
最後の連続ドラマで見せた姿
西田さんが後輩たちを導く役を演じた作品といえば、今年の1月期に放送された『さよならマエストロ』(TBS系)もだ。西田さんの遺作は12月に公開される『劇場版ドクターX FINAL』だが、最後のテレビドラマレギュラー出演作となったのが『さよならマエストロ』である。西田さんは、歌って演奏もできるミュージックカフェの店主を演じた。その店は、崖っぷち市民オーケストラのメンバーが、唯一ホッとできる憩いの場所でもある。 オーケストラを描く作品自体は少ないものの、「オーケストラ」と「崖っぷち」の組み合わせそのものは、わりとベタな設定だ。いまだに傑作として名高い『のだめカンタービレ』(フジテレビ系/2006年)と比較されてしまううえ、近年だと門脇麦と田中圭が主演した『リバーサルオーケストラ』(日本テレビ系/2023年)が人気だったため、オーケストラドラマのハードルはますます上がっていた。そこにぽっと現れた『さよならマエストロ』は、西島秀俊や芦田愛菜という実力派を揃えながらも埋もれてしまうのではないかと、余計なお世話だとは思いつつも懸念していた。そんな心配を吹き飛ばしたのが、西田さん演じる小村だ。 そういえば『さよならマエストロ』の主人公も、へっぽこかもしれない。かつて天才指揮者として名を馳せた夏目(西島秀俊)は、娘の身に起こったある出来事をきっかけに、表舞台から姿を消す。音楽の神様に愛された夏目は、類稀なる才能を持っているのだが、それと引き換えに音楽“以外”のことは全くできない。にもかかわらず、不器用な夏目は自ら音楽を手放し、家族からも見放され、海外で味気ない日々を過ごしていた。 そんな中年男性が元妻に呼ばれるがまま帰国し、崖っぷちオーケストラの指揮を任されるという話なのだが、第1話で「娘に取り返しのつかないことをした」「音楽をする資格はないと思って指揮者をやめた」と自虐気味に笑う夏目に、小村は言う。 「じゃあ、あなたは取り返しのつかないことを、取り返しにきたわけだ」