<頂点へ再び・22年センバツ敦賀気比>/中 挫折、積み重ねた努力 /福井
昨秋の県大会3位決定戦で逆転勝利し、北信越地区大会に出場する最後の1枠をなんとかつかんだ敦賀気比。福井の王者としては臨めなかった同大会。だが蓋(ふた)を開けると、4試合34得点と猛打を発揮して2連覇を果たした。県大会最終日から北信越大会初日までのわずか3週間で、同校は「王者の強さ」を取り戻していた。 その最大の契機として多くの選手らが挙げるのが、やはり県大会準決勝での敗戦だ。そこまでの試合は順調で、2回戦で9―0、準々決勝でも強豪・北陸相手に8―1といずれもコールド勝ちした。 ただ、順調すぎた。「今思うと、うまく行きすぎて『自分たちは強いのでは』と勘違いしていた。慢心があった」と、渡辺優斗選手(2年)は打ち明ける。 昨夏の甲子園でベスト8に進んだ前チームの3年生は強かった。部内の紅白戦では、約10戦中、1・2年生チームが先輩に勝ったのは1試合のみ。力の差を常に感じてきた。春山陽登選手(2年)は「バッテリーは良いが、現チームのレギュラーは『打撃は得意だが守備は苦手』など、誰しもが何らかの弱点があった」と話す。 加えて、現チームに移行したのは雨天順延を繰り返した昨夏の甲子園後の8月下旬。前チームでベンチ入りした2年生はそのバッテリーの2人のみと試合経験が極端に浅く、昨秋の県大会が始まった9月中旬時点では、守備の連係などが詰め切れていなかった。そうした課題が表面化したのが準決勝だった。約2年続いた県大会の連勝記録を29で止めることになった。 気持ちを入れ替えて臨んだ3位決定戦では好機をものにして逆転勝利し北信越大会への出場権を得るも、試練は続いた。10月上旬に行った日本航空石川との練習試合では、2試合で2―4、2―14と大敗。河合陽一選手(2年)は「失策で悪くなった流れを変えるだけの積極的な声出しができなかった」と反省。少しでも気を抜けば勝利はすぐ遠のく。そう痛感した経験だった。 挫折をする度に、普段の練習から一球一球を大事にするよう、意識を改めていった敦賀気比。積み重ねた努力は、北信越大会準決勝の小松大谷(石川)戦で結実した。打線が奮起して四回に4―1とリードすると、その後は失点しても選手同士が互いに鼓舞し合い、逆転を許さず逃げ切った。センバツ出場に大きく近づけるかどうかが決まる大一番で底力を発揮したナイン。「自分たちの成長を一番実感できた試合だった」。そう語る上加世田頼希主将(2年)の表情には、チームが身につけた強さへの自信が芽生えていた。【大原翔】