コアラの好物「ユーカリ」、動物園には悩みの種 食べ残しはなんと8割、神戸で好評の活用策とは
愛らしいコアラの主食と言えばユーカリの葉。柔らかい新芽や若い葉が大好物で、成長した葉は好まないほどのグルメっぷりという。6頭を飼育する神戸市立王子動物園(同市灘区)では長年、ユーカリを自前で栽培してきたが、餌にできるのは全体の2割程度で、それ以外の葉の使い道が悩みの種だった。このほど再利用に向けたプロジェクトを始め、アロマスプレーの商品化にこぎ着けた。(大高 碧) 【写真】ユーカリからできたアロマスプレー 器用に木の上に座り、微動だにしないコアラ。1日平均20時間を睡眠に費やすという。だが、飼育員が新鮮なユーカリを持ってくると様子が変わる。ゆっくり動き出し、むしゃむしゃと葉をほお張り始めた。 「コアラはユーカリしか食べません」。同園の担当飼育員の佐藤公俊さん(58)が説明してくれた。コアラは、ユーカリの木が森林の約60%を占めるオーストラリアで進化した。このため、その葉を消化するのに特化した体になったという。 同園では、1頭当たり1日約20本のユーカリの枝(長さ約1メートル)を餌としている。時期や好みに合わせ、5種類程度からブレンドして提供。枝先の柔らかい新芽の部分が大好物という。 ◇ コアラの飼育に欠かせないユーカリだが、栽培には広大な畑が必要で、その管理費用や輸送のための費用もかかり、高級品という。動物園で飼育する動物の中で、最も食費がかかるのがコアラとされる。 飼育を断念する園も少なくなく、国内でコアラに会えるのは同園を含めて7園のみ。一方で人気は非常に高く、同園では食事の時間になると、愛らしい姿を一目見るためにコアラ舎が来園者で埋まるという。 神戸市は、ユーカリの確保を市公園緑化協会に委託している。年間を通じ、安定して供給するには畑を分散させる必要があり、鹿児島や岡山県などの5カ所の畑と栽培契約を結ぶ。 約30年前からは、輸送費などのコストを減らすため、同市西区にユーカリ畑を設け、同協会が栽培を開始。約9千平方メートルに約10種類を育てており、収穫ができる6~12月は、取れたてを同園に運んでいる。 ◇ コアラのグルメっぷりは、ここでも悩みの種に。新芽や柔らかい葉しか好まないため、餌として使えるのはユーカリの木の2割ほど。何とか残りの部分を再利用できないかと、4月から動き出したのが「ユーカリプロジェクト」だった。 同協会が活用方法として最初に目を付けたのは「香り」。ユーカリは、ハーブ特有の鼻を抜ける爽快な香りでアロマとしての人気が高く、消臭・抗菌効果にも優れる。その特性を生かしたアロマスプレーの商品化を思い立った。 オリジナルハーブオイルなどを販売する専門店「ハーブショップ」(同市兵庫区)に協力を求め、試行錯誤を繰り返した。アロマに適したユーカリの品種「カマルドレンシス」と「ビミナリス」に、香草のレモングラスなどを調合。リラックス効果があるスプレーにした。10月25日(コアラの日)に販売すると、10日間ほどで当初作った100個が完売したという。 同協会職員の志方功一さん(46)は「長年、活用方法を模索してきたので売れ行きには驚いている。このまま好調なら継続して商品化したい」と話す。フラワーアレンジメントなどの観賞用としての活用も模索中という。 ユーカリスプレー(100ミリリットル)は1100円(税込み)。王子動物園内の土産店と「ハーブショップ」で購入できる。