「人に崩される前に自分で崩す」…プレステを“世界で最も売れた家庭用ゲーム機”に育てたソニーの流儀
■ AI時代に不足する「つくれる人」になるための流儀 ――著書では、AIが進化する時代だからこそ「つくれる人」が求められると述べています。具体的にどのような人を指し、なぜ今、そうした人が求められるのでしょうか。 茶谷 「つくれる人」とは、単純にモノを作るだけでなく、新たな価値をつくることで「社会が良くなる」「皆が幸せになる」といったポジティブな影響を生む人を指しています。残念ながら、今の日本には価値をつくれる人が圧倒的に足りていません。 デジタル技術やAIが加速度的に進化した今、データを扱う作業は人間よりもAIの方が早く正確になりました。だからこそ、モノを作ったり、ストーリーを創造したりするなど、AIに任せられない非言語情報的なことができる人の価値が高まっています。 ――つくれる人になるためには、どのような姿勢や経験が求められますか。 茶谷 つくれる人の必須条件は、「チャレンジャーであること」です。これは無謀な挑戦をする、という意味ではありません。実現可能性がゼロでなければ前向きに挑戦する、という姿勢を指しています。 そして、「変わった人に学ぶ」という経験も大切です。個性的で世間の基準から見ると「変わった人」から学ぶことで、新たな価値を生み出せるようになるからです。なぜ、変わった人が価値を創出できるのかというと、それは彼らが普通の人とは異なる視点から物事を見ているからです。 私がソニーに入社した当時配属された開発研究所では、日本初のテープレコーダーを完成させた木原信敏氏が所長をしていました。この開発研究所は「木原学校」とも呼ばれ、さまざまなプロダクトが生み出され、同時に優秀なエンジニアが木原氏の下で「つくれる人」へと育っていきました。 当時の木原氏は既に役員で大ベテランであるにもかかわらず、毎日作業着姿で「世の中にない物を作る。手本を示し、若手に自分の力で進化させる」とアイデアを練る、一見変わった人でもありました。 現代の企業では成果主義にとらわれるあまり、短期的な目標が設定されがちです。変わった人は5年、10年先を見通すことに長ける傾向にありますから、価値をつくれる人になる上で、そうした人の下で学ぶことは重要です。