「人に崩される前に自分で崩す」…プレステを“世界で最も売れた家庭用ゲーム機”に育てたソニーの流儀
■ 自社のプロダクトを「社内の次世代プロダクト」で無力化 ――なぜ、PS事業では業界をリードする変化を起こせたのでしょうか。 茶谷 PSの開発現場でよく言われていたのは「人にビジネスモデルを崩されるくらいならば、自分で崩した方が良い」という言葉です。「人に崩される」という状況は、他社から攻め込まれていることを指します。そうした状況に追い込まれるくらいであれば、自分で自分のビジネスモデルをつぶした方が、長い目で見ればプラスになる、ということです。 ――社内で製品の新陳代謝を促す、ということですね。そのための方法として、どのようなアプローチがありますか。 茶谷 「常に社内で自社のプロダクトを無力化する次世代プロダクトを仕込んでおく」という方法があります。記録メディアを例に挙げると、磁気テープのVHS・ベータが主流の時代にデジタル記録タイプのDVDを準備し、その後は光ディスク記録タイプのCD・DVD・BDを社内の隣接部署で用意する、という具合です。 その際には、将来投資の議論が欠かせません。今ある事業の資金から先端技術や新サービスの開発に回せるお金を捻出できないか、考える必要があるのです。つくれる人になるためには、誰もが資金の問題に直面します。だからこそ、他社に自社のビジネスモデルを崩される前に、先んじて資金の課題と向き合うことが大切です。
三上 佳大