「癇癪持ちで束縛癖がある妻」と“離婚させてもらえない”夫。法律の専門家が授けた“作戦”を決行した結果
「妻が守らなければならない内容」を誓約書に盛り込んだ
「こうやって頭を下げているのに信じてくれないの。私たちは夫婦じゃないの?」と不信感を示したのですが、拓真さんは「悪いけど、一筆を書いてくれないと離婚を考えなくちゃいけない。僕はそこまで覚悟して今日、こういう話をしているんだ」とダメ押しをしたのです。誓約書に盛り込んだのは以下の3点ですが、いずれも妻が守らなければならない内容です。 1.出張中にやむを得ない場合を除き、「帰ってきて」と連絡しないこと 2.一人で自宅にいるときに、備品等を破損しないこと 3.夫婦で決めるべき事項について、前もって母親に相談しないこと 上記1から3の1つでも守れなかった場合は離婚することに承諾します。 妻は「そこまでしなくちゃいけないの?」と怖気づいたのですが、拓真さんが「誓約書を守っている限り、二度と離婚の話を切り出したりしない。安心してくれ」と念押ししたので、妻は渋々と記入したのです。 もちろん、誓約書を役所に持ち込んでも離婚したことにはなりません。正式に離婚するには誓約書ではなく離婚届に署名をもらう必要があります。妻が離婚届に署名するよう説得するために誓約書を使うという位置付けです。このときは「どうせ守れないだろう」と軽く考えていました。
妻が外で働き始め、事態は好転
夫婦の関係はこのまま悪化の一途を辿るかと思いきや、思わぬ幸運が訪れました。2020年、妻が外で働き始めたのです。夫婦の子どもが中学校へ入学すると、妻の方から「家計の足しになれば」と切り出したのです。拓真さんは「嬉しいけれど、今まで働いたことがないし、難しいんじゃないかな」と答えたそう。実際のところ、妻は結婚してから13年間、ずっと専業主婦。少しも働いたことはなく、仕事の経験値がないに等しいし、これといった資格やスキルもありません。 実際のところ、この年の有効求人倍率は1.10倍。前年(1.55倍)を0.45ポイント下回り、コロナ不況の影響をもろに受けていました。 しかし、拓真さんの予想は良いほうに外れました。人材派遣の会社が妻を採用したのです。当時は新型コロナウイルスが蔓延した1年目。消毒の徹底やソーシャルディスタンスの確保など感染対策が厳しくとられていた時期でした。妻に与えられた仕事はサッカーや野球、コンサートの会場でマスクを着用していない人に対して「マスクの着用をお願いします」と声かけをすること。 着用していない人に逆ギレされる可能性はあるものの、誰でもできる仕事です。その結果、妻は平日の日中、働いているので1人で寂しい思いをしません。筆者が「どうなったのですか?」と聞くと、拓真さんは「出張中にLINEが届かなくなったんです」と喜びます。そして1人で自宅に取り残され、不安な思いをし、イライラすることもありません。そのため、モノに当たって傷つける機会もなくなったのです。