「ゾンビ」と揶揄される比例復活 小選挙区との重複立候補対応から透ける各党の思惑
品田裕・神戸大大学院教授(選挙制度論)の話
現行の小選挙区比例代表並立制を導入した政治改革においては、政治家個人から政党主体の政治に変えるという問題意識が出発点になっていた。
小選挙区制が目指すのは、政権交代を懸けて主要政党が競い合う英米型の二大政党制だ。ただ小選挙区でこぼれ落ちた民意を補うために導入した比例代表では、小選挙区での惜敗率が当落の鍵を握る。政党主体の政治を目指すなら、政党の判断と責任をより反映させる制度とすべきだが、現行では有権者の投票行動に左右される。
一方、各選挙区で複数人が当選する中選挙区制の時代は、投票先を政党ではなく、候補者個人で選ぶ感覚があり、今も根強い。小選挙区で落選した候補が比例復活する仕組みに有権者が疑問を抱く状況が続いている。
現行制度導入から約30年がたった。地域政党やワンイシュー(単一論点)型の政党が生まれ、政党のあり方も変わっている。導入時の理想と制度の間でズレが生じていないかを検証し、国民が納得する選挙制度について議論を始めるべきだろう。(聞き手 藤谷茂樹)