インターネット上での「ヘイトスピーチ」が大きな問題に…“偏見・差別”解消に向けた法務省の取り組みとは? 専門家が解説
杉浦太陽と村上佳菜子がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「杉浦太陽・村上佳菜子 日曜まなびより」(毎週日曜 7:30~7:55)。「学びと成長」をコンセプトに、毎回さまざまなゲスト講師をお招きして、明日の暮らしがもっと豊かになる情報や気になるトピックをひも解いて、今よりもちょっと成長することを目指す番組です。 6月16日(日)の放送テーマは、「ヘイトスピーチ、許さない。違いを認め尊重しよう!」。法務省人権擁護局総務課 人権擁護推進室長の杉山典子さんをゲストにお迎えして、ヘイトスピーチ解消のための法律ついて伺いました。
◆インターネット上でのヘイトスピーチが増加
円安の影響もあってインバウンドが増え、街なかで外国人観光客を目にすることが多くなりました。それに加えて日本で暮らす外国人も増えており、昨年末の在留外国人数は約342万人と過去最高を記録しています。その一方で、言語や宗教、生活習慣などの違いから、外国人が関わるトラブルがいろいろと起きています。今回は「ヘイトスピーチ」「外国人の人権」について取り上げます。 法律上ではヘイトスピーチに明確な定義はありません。しかしながら、街頭デモやインターネット上で、特定の国や地域の出身者、特定の民族の方に対し、そのことのみを理由に以下のような言動をする人がいます。 ・一方的に社会から追い出そうとする ・危害を加えようとする ・相手を著しく侮蔑する 一般的に、こうした言動が「ヘイトスピーチ」と言われています。また、かつてサッカーの競技場で、一部のサポーターが“JAPANESE ONLY(日本人以外お断り)”と書かれた横断幕を掲げ、社会的に大きな議論にもなった事件がありましたが、こうした暗に特定の国の出身者を排斥しようとするのもヘイトスピーチにあたり、「法務省ではスポーツ団体とも連携して、ヘイトスピーチ解消に向けた呼びかけをおこなっています」と杉山さん。 これまでのヘイトスピーチは街頭での宣伝活動で多く見受けられていましたが、近年はインターネット上でのヘイトスピーチが目立っています。インターネットでは匿名でヘイトスピーチを投稿できてしまうほか、それが世界中にリアルタイムで拡散されたり、内容が永続的に残ったりする可能性もあり、インターネットでのヘイトスピーチによる被害は深刻化する恐れがあります。 なかには、SNSに書いてあることを鵜呑みにして、それが真実かどうかを確かめないまま気軽にヘイトスピーチにあたる投稿を拡散する人もいて、投稿内容が刺激的であればあるほど拡散する傾向があることから、ネット上のヘイトスピーチは大きな問題となっています。 国籍、人種、民族などを理由としたヘイトスピーチは、言われた人々の心を傷つけて尊厳を踏みにじるもので、それは決してあってはならないことですが、問題はそれだけではありません。例えば、今まで何も思っていなかった人々が、ヘイトスピーチを見聞きしたことによって、そのスピーチの対象となっている人々に対する差別意識を新たに生じさせてしまう恐れがあります。 杉山さんは「実際、インターネット上でヘイトスピーチに当たる言動を見聞きした人が影響を受けてしまい、“差別意識”を動機として犯罪行為にまで至った事件が報道されたこともあります。ヘイトスピーチによって偏見や差別が助長されてしまうことも大きな問題です」と説明します。 日本だけに限らず、諸外国でも外国人を排斥する動きは根強くあります。こうした状況から、2021年に国連総会において毎年6月18日を「ヘイトスピーチと闘う国際デー」と定める決議が採択され、その翌年には、アントニオ・グテーレス国連事務総長による「ヘイトスピーチはあらゆる人々にとって危険であり、それと闘うことは私たち全員の責務」とのメッセージが寄せられるなど、国際社会においてもヘイトスピーチへの対応が求められています。