人間のオペレーターを不要にする「AIコールセンター」、米新興Vapi
サンフランシスコを拠点とするスタートアップ企業Vapi(ベイピ)は、人間のオペレーターとほぼ区別がつかないクオリティの人工知能(AI)を活用した音声エージェントを企業向けに提供できると述べている。同社は2024年12月12日、シリーズAラウンドで2000万ドル(約31億5500万円)を調達したことを発表した。 「私たちのテクノロジーを導入した企業のコールセンターを利用した顧客の多くは、AIエージェントと会話をしていることに気づかない場合が多い。仮に気づいたとしても、そのエージェントが問題を解決する能力に満足している」と、Vapiの共同創業者でCEOのジョーダン・ディアズリーは述べている。 同社は、企業が特定のニーズを満たす音声エージェントを開発するためのデベロッパープラットフォームを構築している。このビジネスモデルは、全ての企業が同じではなく、標準化された音声エージェントだけでは個別の企業のニーズを満たせないという考えに基づくもので、Vapiは、顧客関係管理(CRM)ソフトウェアやその他のツールと連携可能なシステムを提供している。 ディアズリーは、この仕組みをうまく活用できる企業は、本物の競争優位性を獲得できると信じている。「コールセンターの人員拡大は、コストを伴うが、生成音声モデルを使えば、何百万件もの通話を処理できるようになる」と彼は主張する。 ディアズリーはまた、ハイテク大手各社がより人間に近い会話を実現する新たな音声サービスの提供を進める中で、Vapiが最適なタイミングで成長していると考えている。「アップルのApple IntelligenceやグーグルのGeminiは、本格的な音声アシスタントを人々に提供しようとしている。消費者は今後あらゆる場面で音声エージェントを求めるようになる」 音声エージェントに求められるのは、顧客が求めるものを迅速かつ合理的に提供することだが、Vapiのテクノロジーを早期に採用した企業は、その能力に感銘を受けている。そのうちの1社が、ヘルスケア分野の企業顧客や患者向けに顧客サービスプラットフォームを構築する企業のLuma Healthだ。 「私たちは、成熟したプラットフォームと優れた機能を理由に、Vapiを音声AI戦略の基盤に選択した。同社のプラットフォームは、音声エージェントのシームレスな統合を可能にし、迅速に顧客にソリューションを提供できる」と、Luma Healthでエンジニアリング担当のシニア・バイスプレジデントを務めるマルセロ・オリベイラは述べている。 ■評価額は200億円に この分野ではVapiの競合のBland AIやRetell AIも、音声エージェントの改善に向けてイノベーションを続けている。そのため、Vapiは今回調達した資金をエンジニアリングに投資し、音声エージェントの処理容量を拡大し、AIが幻覚を生み出さないようにモデルの確実性を向上させる予定だ。 今回のシリーズAラウンドは、ベッセマー・ベンチャー・パートナーが主導し、Yコンビネータやアブストラクト・ベンチャーズ、サーガ・ベンチャーズらが参加した。この調達でVapiの累計調達額は2300万ドル(約36億2800万円)に達し、評価額は約1億3000万ドル(約205億円)に上昇した。
David Prosser