「この寒さはフィルムのために “フィルムファースト”」100年以上保存するために 国立映画アーカイブに納められた原爆記録フィルム その保存場所を訪ねる【ヒロシマの記録】
長い時を経て、1993年、東京の倉庫でフィルムが見つかりました。映画に盛り込まれていないシーンも数多くあり、RCCは被爆50年をはさんで、この撮影に関わった人たちを訪ね、映像に映る場所や人の特定を進め、新たな情報や証言を伝え続けました。 しかし、長い時間の経過でフィルムの劣化が進み、一定の環境下で保存する必要があるため、国立映画アーカイブに納めることにしました。 わたしたちは国立映画アーカイブの保存庫地下2階に降りました。堅い扉の向こう「ならし室」と呼ばれる部屋に入ります。気温が15℃まで下がります。 国立映画アーカイブ 大澤浄 主任研究員 「ここは保管する部屋ではなく、中間の部屋です。いまでも保存されているフィルムはいろんな用途に使われています。上映に使うなどします。フィルムをいきなり30℃のところへ持って行くとどうなるかというと、温度差で結露してしまうのです」 フィルムの大敵、水滴から守るために温度が中間の部屋が大切だということです。そして、わたしたちはさらに扉の向こうへ行きました。保存庫の通路です。かなりひんやりします。この場所は保存庫の中と同じ5℃に設定されています。1部屋あたり1万缶ほど保管できる部屋が10室。その一番奥の部屋に原爆記録フィルムは納められています。 国立映画アーカイブ 大澤浄 主任研究員 「この401の部屋は2℃と、一番低い温度です。フィルムの保存・保管については、(氷点下にできるだけ近い温度で)低ければ低いほどいいという研究結果がでています」 最も低い温度の部屋に入りますと、さらにかなり冷え込んできます。独特の酸っぱい感じのお酢のようなにおいがしてきます。これは当時のフィルムの材料の酢酸を主成分としていたプラスチックが長い時間が経過すると、酸っぱいにおい・ガスを出して劣化するのです。ビネガーシンドロームといいます。2℃に設定された部屋は、特に劣化が進んだフィルムばかりが集められています。