ル・マン伝説9回勝者クリステンセン、母国の後輩マグヌッセンを語る「デンマークの人は皆彼が好きなんだ」
ケビン・マグヌッセンが2024年限りでF1を離れ、2025年はBMWのドライバーとしてWEC(世界耐久選手権)を戦うことになる。このマグヌッセンについて、同郷デンマーク出身の伝説的レーシングドライバー、トム・クリステンセンが語った。 マグヌッセンは2014年、マクラーレンからF1デビュー。その初戦となるオーストラリアGPでいきなり2位表彰台を獲得した。 しかしこのシーズン、マグヌッセンは安定して入賞はするもののそれが精一杯。開幕戦以降は1度も表彰台を獲得できぬままシーズンを終えた。その結果、フェルナンド・アロンソにシートを奪われることとなり、リザーブドライバーとして1年を過ごした後、ルノー、ハースと渡り歩いた。結局11年9シーズンにわたってF1にフル参戦したが、表彰台はデビュー戦の1回限り……2024年限りでF1を離れ、2025年はWECへと活動の場を移すことが決まっている。 「キャリア初期、彼への期待は非常に高かった。そして、メルボルンでマクラーレンからのデビュー戦で、この小さな国(デンマーク)でのプレッシャーは、彼にとっておそらくさらに大きくなっただろう」 ル・マン24時間レースで史上最多9回の総合優勝という実績を持つクリステンセンはそう語った。 「F1デビュー戦で表彰台に上がれば、誰もが『チャンピオンを狙える逸材だ!』と言うだろう。彼も自分の夢は『F1で世界チャンピオンになること』だとずっと言っていた。そんな中でそういうデビューを飾ったことで、デンマークでの彼への期待は、その方向に向かっていた」 当時のマクラーレンは、成績が年々下降線を辿っていた頃。そういうタイミングも、マグヌッセンにとっては不運だったかもしれない。 ただその後好結果を残せなかったのも事実。トップチームに返り咲くチャンスは訪れなかったように見える。しかしクリステンセンは、少し違う考え方をしているようだ。 「ケビンは楽な道を歩んできたわけじゃない。しかし、チャンスはあった。何度かF1から遠ざかり、3回もカムバックしているわけだから、チャンスはあったと言える」 そうクリステンセンは言う。 「素晴らしいハイライトもあったが、低迷期が多すぎたとも言える。チームと共にグリッドの上位に駆け上り、安定したキャリアを築くには、そのハイライトの数は足りなかったとも言える」 「だから、潜在的な能力を発揮しきれなかったと言う人もいるだろう」 「調子の良い日の彼は、そういうポジションにいる。そして『これがケビンだ!』と言うんだ。今年のメキシコのようにね」 2024年のF1メキシコシティGPでマグヌッセンは、予選で7番手、決勝を7位でフィニッシュした。これが、このシーズンの最高成績である。 クリステンセンは、もっと一貫性があれば、マグヌッセンは大成できたかもしれないと考えている。 「彼は自分自身にとても厳しい人物だ」 「そういう意味で彼は、隠し事がない。だから調子が良い時には地に足がついているけど、調子が悪い日には落ち着いていたいんだ。そしてリスクを冒そうをしているのがわかる。それが良い結果に変わることもあるけどね」 「でももう少し安定していたら、もっと良かっただろう」 クリステンセンを含め、デンマークの人たちは、マグヌッセンがグリッドからいなくなることを寂しがっているという。 「彼はとても人気があるんだ。彼の正直さとハードなレースを、我々は気に入っているんだ」 「つまり、マックス・フェルスタッペンとも多くの共通点があるということだ。しかし方や4度ワールドチャンピオンに輝き、もう一方はF1を去らなければならない。彼がもっとポイントを獲得するのを見たかったね」 ただクリステンセンは、マグヌッセンが4度目となるF1復帰を果たす可能性についても言及している。2026年からはキャデラックが新規参戦することが決まっており、F1のシート数は拡大するからだ。 「彼ら(キャデラック)は誰を狙っているんだろうね?」 そうクリステンセンは言う。 「そういう意味では、ケビンが4度目の復帰を果たす可能性も否定できないよ」
Erwin Jaeggi