今振り返る、優勝につながった「2017年のラブレターズ」
結成16年目、初めての決勝進出から13年。『キングオブコント2024』でチャンピオンに輝いたラブレターズ。決勝に顔を見せなかった時期も、彼らは面白いコントを作り、独自の活動を広げ続けていました。二人に、「沈黙の期間」を振り返ってもらいます。 【すべて見る】
まだ経験できていないチャンピオンの実感
──『キングオブコント』優勝から1か月あまり経ちましたが(取材は11月)、チャンピオンの実感は出てきましたか? 溜口:まだないですねえ。全然声もかけられないし。塚本さんもでしょ? 塚本:うん。今夜のライブのために大きなパネルを持ち運んでいたら、電車でおじいさんに「画商の方ですか?」と話しかけられましたけど。 溜口:チャンピオンが大荷物持ってるわけないもんね。荷物の量からして、まだ僕らチャンピオンの動きができてないんですよ。 塚本:実感というか、嬉しかったことはひとつあって。妻のお義母さんが、これまでよく「ミシンすごいね」(※「塚本ミシン」の名で洋服のリメイクを行っている)、「アフリカの民族楽器すごいね」(※「アサラト」という民族楽器の演奏を行うことがある)と言ってくれてたんです。でもこの前会ったとき、優勝を「ほんとにすごいね」と、お笑いについて初めて言ってくれた。 溜口:よかった。これまではプレッシャーがかかると思って気遣ってくれてたのかな。僕は収録とかで豪華なケータリングを体験できているのが嬉しいですね。
3度目の決勝進出直後、2017年の「焦り」
──お二人は昨年、4度目の『キングオブコント』決勝に返り咲くまで7年間決勝に進めない苦しい時期があったと思います。ただ、今回決勝で披露したどんぐりのネタ(『光』)は、2017年の単独ライブ(LOVE LETTERZ MADE⑩『SWEET da PARTY』)で初披露されたコントですよね。 溜口:そうです。 ──2017年のお二人は、ミュージシャンとの対バンライブなど、かなりバラエティに富んだライブ活動を頻繁にされていた記憶があります。 塚本:そうですねえ。 溜口:対バンライブは3回やりましたし、お寺でのライブもありましたし。 ──キングオブコント決勝という場所にはたどりつかなかったものの、あの年にお二人の中に蓄積されたものがあったのではないか、と思って。2011年に結成3年目で決勝に進出されて、さらに2014年、2016年にも決勝に行ってというタイミングで、「ここで駆け上がっていこう」という攻めの活動だったんでしょうか? 塚本:実はどちらかというと逆で。決勝には進出したものの結果を残せず、なかでも2016年は最下位で、焦ったんですよ。 溜口:『キングオブコント』だけではしんどいから、ライブのお客さんを増やしたい、という意味合いが大きかったんですよね。 塚本:だから2017年は、12月の単独ライブをゴールとして、毎月趣向を凝らしたライブを開催していきました。 溜口:新しい「ホーム」を作らなきゃいけないという感覚だったんですけど……、残酷な話、動員は増えなかったんですよ。奇抜なライブを重ねたせいで、かえってお客さんをふるいにかける形になってしまった。だから2017年からしばらく、単独ライブができていないんです。 ──たしかに、それまで毎年必ず開催されていた単独ライブが、2018年には行われていません。 溜口:事務所から「単独ライブをやっても意味がない」と判断されてしまった結果で。だから良くも悪くも、そこがターニングポイントではありました。今までのラブレターズのままじゃもうダメなんだというのがはっきりわかった。あの時からちょっと、「おじさん」にシフトしていった感じはあります。若手の頃は何をやってもお客さんがついてきてくれたんですけども。 塚本:その時期はもう終了。 溜口:2014年にやっていた『ラブレターズのオールナイトニッポン0』の賞味期限も切れて、お客さんも新しい芸人を見つけていって。 塚本:そして2018年には第7世代がドンとやってきて。僕ら完全に地獄の時代に突入する、という感じでしたね。 ──その時期、コントに対するモチベーションはどのように保っていたんでしょう? 塚本:単独の代わりに「60分新ネタライブ」をやって、ネタ自体はちゃんと作っていたんです。でも、いかんせん響かない。もう求められていないのかな、と思っていた時代ですね。 溜口:毎年いいネタができてはいて、自分たちの中で「今年は行けるだろう」という感覚はなくなっていなかった。お客さんがあまりこっちを向いてくれてないなという実感があるだけで、ネタのクオリティはそこまで変わってなかったなとは思うんですけどね。