小林海がエリート初の日本王者に! 風雨のサバイバルを制す【Cycle*2024 全日本自転車競技選手権大会 ロードレース:レビュー】
流れが一転したのは12周目。先頭にいた増田の後輪がパンク。これで足止めと余儀なくされると、タイミングを同じくしてメイン集団がペースアップ。単独先頭となった宮崎との差を次の周回までに一気に縮め、追いつくのは時間の問題となった。 そんな中、今大会最注目のひとりであった新城が落車。左肩を激しく傷め、血をにじませながら集団復帰を急ぐ。ドクターカーからの処置を受けると、14周目を迎えたところでメイン集団へ。
この周回の後半、金子のアタックをきっかけに小林、山本、小石祐馬(JCLチーム右京)の4人が飛び出した。これを山本元喜(キナンレーシングチーム)がひとりで追うが、あと一歩のところで追いつけず。新城や留目夕陽(EFエデュケーション・イージーポスト)のUCIワールドチーム勢などとともに第2グループからの追走となる。 先頭の4選手は、後続に追いつかれまいとスピードを上げる。30秒程度だった第2グループとのタイム差は、やがて1分ほどまで開く。新城と留目、さらには石上優大(愛三工業レーシングチーム)、石原悠希(シマノレーシング)といった各チームのエースクラスが入った追走グループだったが、完全に前を行く選手たちの勢いが勝っていた。
徐々に優勝争いへと移っていく前の4人。残り2周回になろうかというタイミングで小林が仕掛ける。ただ、ここは勝負というよりも駆け引きのひとつといった様子。代わって金子が前に出て他の3人の動きを測る場面も。決定打は、最終周回へと持ち越された。 運命の最終ラップ。力強い牽引を見せるのは、タイムトライアルでその強さを実証済みの金子。下り区間で小石が前に出るも、やはり金子がチェック。今度は小林がカウンターで加速すると、山本と金子がすかさずチェック。日本チャンピオンジャージを賭けた戦いの行方は、最後の直線にゆだねられた。
一度は後ろに下がっていた小石が他の3人に追いついて、同時にスプリントを開始。すぐに反応したのは金子。これで抜け出したかに見えたが、小林が金子の脇から伸びてくる。わずかに前に出た小林が一番にフィニッシュラインを通過。右こぶしを高らかに掲げ、自身の勝利を誇示した。 2016年にアンダー23(23歳未満)カテゴリーでロードレースとタイムトライアルを制して以来、日本人トップライダーとして国内外で活躍。NIPPO・ヴィーニファンティーニに所属後、ルーマニア籍のチームを経て現所属のマトリックスパワータグへ。2022年シーズンには国内レースで圧倒的な強さを誇り、優勝候補筆頭と言われながら臨んだ全日本選手権で勝てなかったこともあった。
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