「苦しいでしょうがご辛抱ください」と言った主治医に、松下幸之助が返した最期の言葉
最期の言葉
1989年4月6日、松下幸之助は38℃の高熱を出し、気管支肺炎を発症し、松下記念病院で治療を受けることになります。同月20日、主治医に「これから管を喉に入れます。苦しいでしょうがご辛抱ください」と声をかけられ、「いやいや、お願いするのは私です」と声を振り絞って答えました。これが最期の言葉となり、その1週間後に永眠します。
未収録の随筆2本を公開
1968年に刊行された『道をひらく』。人生や仕事への姿勢を書き綴った随想集は、累計566万部を突破するロングセラーとなって読みつがれています。1978年には続編の『続・道をひらく』が刊行されました。短く読みやすいエッセイは、松下幸之助みずからが『PHP』の裏表紙で連載していたもの。今回、『道をひらく』や『続・道をひらく』に収録されていない作品を『PHP』のバックナンバーから選びました。 『PHP』での松下幸之助の連載は数多くありましたが、裏表紙は1949年から1985年まで、最も長く続いた連載でした。 ※ 随筆の原文に使用された旧仮名や旧字体は新仮名・新字体に改めています。また、掲載に際して新たに読みがなをふりました
「日に新たに」
希望と勇気とは、人にいつも青春を与える。それは年齢の如何(いかん)を問わない。若くとも希望を失えば忽(たちま)ちにして老い、勇気を失えばその日から潑剌(はつらつ)さは消える。 希望は与えられるものではない。自ら求めゆくものである。勇気もまた他から与えられるものではない。自ら奮い起すものである。 人生への希望と勇気に満ち満ちたとき、人は日に新たなる生活を営みはじめる。 日に新たに、日に日に新たに。 それは自然の理法であり、すべてのものの発展してゆく姿である。繁栄を望むならば、人もまた日に新たでなければならない。 日に新たとは、絶えざる創意と工夫がこらされることである。 一瞬一瞬に工夫をこらし、創意を生み出してゆくことである。この努力―そこから限りない繁栄と平和と幸福とが生み出されてくる。(1949年11月号)