茶碗蒸し!?のような伝統料理 筑前・朝倉地域の「蒸し雑煮」/福岡県
器に箸を入れると、蒸されてプルプルになった溶き卵の中から、鶏肉やブリ、かつお菜、ちくわ、シイタケなどが出てきて、宝探しのような楽しさがあります。「昆布とかつお節でとっただしが決め手で、具材にも下味を付けています」と中西さん。スプーンで溶き卵とだしをすくって口に運ぶと、ふんわり優しい味が広がりました。 器中央の底のあたりで、それまでとはちょっと違う感触が……。この料理のメインである餅の登場です。伸びる餅を味わいながら、「これが筑前朝倉蒸し雑煮か」と実感します。食べ終わると、おなかいっぱいで、体はぽかぽかでした。 中西さんは「真夏の暑い日でも注文が入ります。作るのは大変ですが、多くの人が喜んで食べてくれるので、これからも提供し続けたい」と話します。
未来につなぐ食文化
観光協会はプロジェクトの一環で、家庭でも蒸し雑煮を簡単に作れるレトルト商品(税込み702円)を開発。だしと餅がセットになっており、溶き卵と好きな具材を入れて蒸せば完成します。観光協会やプロジェクトの公式サイトなどで購入できます。
「お雑煮研究家」として全国の雑煮を調査している粕谷浩子さんは、著書の中で、変わり種雑煮の第1位に蒸し雑煮を挙げています。「蒸す雑煮は全国でもほかにはない。歴史もあって興味深いです」と粕谷さんは語ります。 筑前朝倉蒸し雑煮は2024年3月、地域で受け継がれ、継承すべき食文化として、文化庁の「100年フード」に認定されました。観光協会の里川さんは「プロジェクトに取り組んだことで、蒸し雑煮が注目されるようになりました。もっと広めて、朝倉を訪れた際は『食べて帰らんとね』と思ってもらえるようにしたい」と話しています。
読売新聞