公務員が副業で農業を支援、和歌山のミカン・山形のサクランボなど…人口減や農家の高齢化を背景に
高齢化と人手不足に悩む農家の支援のため、各地の自治体が職員の副業に収穫の手伝いなどを認める試みを始めている。国が公務員の副業として社会貢献活動などを積極的に認める方針を打ち出す中、これを利用して地域産業である農業を下支えするのが狙いだ。(和歌山支局 遠藤花乃) 【地図】和歌山県
「育てたミカンを収穫できると思うと誇らしく、楽しみだ」。12月9日、和歌山県海南市下津町のミカン畑で、下津消防署の消防士、町田賢次さん(38)は笑顔を見せた。
町田さんは、市に副業の許可を得て、山崎国寛さん(49)の農園を手伝っている。交代勤務のため平日でも手伝うことが可能で、昨年11月から週に1、2回通う。報酬は時給1000円で、山崎さんは「仕事ぶりが真面目で体力もある。とても助かっている」と感謝する。
地方公務員法は、自治体職員が許可なく会社に勤めたり、報酬を得て業務に従事したりすることを禁止している。そのため、従来は相続した農業や不動産賃貸を続けるといった特別な場合に許可するケースが中心だった。
近年になり、働き方の多様化や人口減を背景に、総務省が公務員も地域の担い手となれるよう2020年に許可基準の考え方を整理して通知。基準を設けて、伝統行事の手伝いやNPO活動などを副業として認める自治体が増えた。
同省の調査では、23年度に許可の基準を設定していた自治体は1151で、5年前の703から大幅に増加。全都道府県、市区町村の64%に広がっている。
この流れを受けて、海南市は23年10月、ミカンをはじめとする農業の支援を副業として認めた。20年の県内の温州ミカン農家数は6348戸で、10年前より2500戸近く減少。県内の専業農家の平均年齢は65・1歳で、市の担当者は「担い手不足で畑を縮小せざるを得ないという話も聞く。農家を支える措置になれば」と期待する。23年度は11人、24年度は11月末までに16人がミカン農家を支援した。