“イリオモテ”じゃないヤマネコが長崎県・対馬にいる! 100頭の絶滅危惧種に会いにいく
#307 Tsushima対馬(長崎県)
長崎空港からORCオリエンタルエアブリッジの小型機で約35分。九州本土と韓国の間に浮かぶ国境の島、対馬。韓国までは直線距離にして約50キロ、一方で九州の博多港までは132キロ。実は、異国の方が近かったりします。 【画像】対馬野生生物保護センターで会えるツシマヤマネコのかなたくん。 島は南北82キロ、東西18キロと細長く、沖縄本島と北方領土を除けば佐渡島、奄美大島に次いで3番目の大きさ。島の真ん中あたりに入り組んだリアス海岸や小さな島がこちゃこちゃっと浮かぶ浅茅湾が位置し、上島と下島を分けたようなカタチになっています。 そして島の約9割が山間部。お隣に浮かぶ平坦な壱岐と好対照をなしています。 “国境の島”とはいえ、空港から中心地の厳原(いづはら)へ向かう国道沿いには無印良品の大型店舗に大型スーパーマーケット、郊外型のドラッグストアが続き、なかなか暮らしやすそうな環境。 けれどそれも下島の厳原周辺に限られ、浅茅湾の万関橋を越えて上島に入ると、濃密な自然の中へと分け入っていく感覚がします。
マジックアワーの韓国展望所からの眺めがきれい!
まずは、“国境”を感じようと北端近くの韓国展望所へ。気象条件が整えば韓国・釜山が肉眼で見られるそう。 到着した時はちょうど日没。茜色の空が淡いパープルへと変わる、マジックアワーでした。空の色の移ろいに圧倒されていたら、水平線に街灯がぽつり、ぽつりとまたたき始めました。 海を隔てて自国から外国を眺めるのは、はじめての体験です。先人たちはどんな思いで隣国を眺めていたのだろう、と想像が膨らみます。 朝鮮半島や大陸に向けて開かれた日本の窓口だった対馬。その歴史は長く、この島最古の紀元前6800年頃の越高遺跡からは九州と朝鮮半島、双方からの品が出土し、それは対馬が両国の懸け橋だった証だそう。3世紀の中国の歴史書『魏志倭人伝』の中にも、大陸から日本への道において最初に見える日本として対馬国の記述があります。 大陸との交流や交易は続くも、白村江の戦いで日本・新羅・唐の国境がほぼ確定してからは時として国防の最前線になることも。それでいて、戦場になった過去はないため、貴重な史料が残されたタイムカプセルだとも言われています。 グンとさかのぼって、今から数万年前。対馬は大陸と陸続きになったり、離れたりを繰り返し、今の独立した島になりました。こうした島の成り立ちから、対馬の生物相はユニークな状態になっています。 大陸からやってきたもの、日本本土の生物、対馬で進化した固有種。3タイプの動植物が同居する、いわば生物のクロスロードになっています。 大陸系の代表格といえば、ベンガルヤマネコの亜種のツシマヤマネコ。空港などにも目撃情報マップが張り出されていて、出会いを期待してしまいます。まずは情報収集を、と対馬野生生物保護センターへ。主席自然保護官の柴原崇さんから話を伺うことができました。