沖縄で相次ぐ米兵女性暴行事件と公表しなかった政府の「根深い問題」
また、もう一つは6月23日の沖縄慰霊の日です。毎年、糸満市摩文仁の平和祈念公園で開かれる「沖縄全戦没者追悼式」には首相も参列し、追悼の言葉を述べますが、その前に事件が明るみに出るのはまずい、という判断が官邸になかったのか。「裁判は7月だから、政府としては非公表を貫こう」と考えても不思議はないと、私は思います。 ■情報共有されれば「2件目は防げた可能性」 それでも隠蔽の意図を否定し、被害者保護を理由に「問題はない」としていた政府側が、ある意味、態度を一変せざるを得なくなったのが2件目の発覚でした。1件目が報じられた3日後の6月28日、地元紙が「5月にアメリカ海兵隊兵士が成人女性に性的暴行をしようとしてけがをさせ、6月17日に起訴されていた」と報じた件です。この事件も、県には一切連絡がありませんでした。 これがなぜ、政府にとって痛かったのか。それは「1件目の段階で地元に情報が共有され、再発防止策が取られていれば、2件目は防げた可能性がある」という主張が、一定の説得力を持つからです。1件目の発覚後、林官房長官は会見で「3月の起訴を受けて、直ちに外務次官から駐日大使に遺憾の意を伝え、綱紀粛正と再発防止の徹底を申し入れた」と言いましたが、そのわずか2か月後の再発は、政府間の形式的なやり取りが意味を成さなかったことになるからです。 玉木知事は「非人道的で卑劣な犯罪が再び発覚したことは、県民に強い不安を与えるだけではなく、女性の人権や尊厳もないがしろにするもので、断じて許せない。こういう状況がある意味、野放しにされているということは、もう遺憾の意を超えている」と怒りを露わにし、県に連絡がなかったことについて「日米で合意した通報手続きに基づいた情報提供の徹底について強く抗議していきたい」と訴えました。 これを受け、林官房長官や木原防衛大臣は会見で相次いで「アメリカ側に綱紀粛正と再発防止の徹底を申し入れた」と述べ、特に上川陽子外務大臣は「被害に遭われた方のことを思うと心が痛む。政府の対応に不信感を招いていることについて重く受け止めている」としたうえで、「地元との情報共有のあり方も検討する」と踏み込みました。そもそも一連の問題は外務省の責任が重いと、私は思っていますが、再発を防げなかったことについて、上川大臣は一人の女性として忸怩たる思いを抱いていると感じる発言でした。