トランプ氏銃撃事件から考える…なぜ人は暴力に走るのか?追い詰められた弱者がある日“無敵の人”に変貌?研究者「他人を攻撃することによって自己肯定感を取り戻している」
世界を震撼させたトランプ前大統領の銃撃事件。銃弾は右耳を貫通、あと少し当たりどころがずれていれば命の危険も。直後に射殺されたトーマス・クルックス容疑者の犯行動機はいまだ不明だが、各メディアではクルックス容疑者の人となりが報じられ、なぜ暴力という手段に訴えたか憶測が飛び続けている。日本でも2年前、安倍晋三元総理が奈良県の大和西大寺駅で演説中、手製銃で撃たれて亡くなった。なぜ政治への暴力が相次ぐのか。『ABEMA Prime』では、社会的に孤立した弱者が、ある日「無敵の人」に変わってしまう理由について議論が展開された。 【映像】銃撃を受けた直後、立ち上がりガッツポーズするトランプ氏
■世界的に進む社会の“分断”
今回、銃撃されたトランプ前大統領だが、政治家としては社会の分断を煽って自分の力とするタイプのリーダーだという見方がある。同志社大学・吉田徹教授は「トランプ氏が2016年に大統領になった時、この大統領は弾劾されるか暗殺されると思っていた。分断を進めればハレーションも起きる。不幸な出来事ではあったが、自ら引き起こした結果でもある」とした。バイデン大統領がトップに立つ民主党と、トランプ前大統領の共和党。この2つを見ても分断は大きく「メディアも民主党系と共和党系とそもそも2つに分離している。共和党支持者は民主党系のメディアを見ないし、民主党系の人は共和党系メディアにそもそも接しない。現実世界でもフィルターバブルが出来上がっている。民主党員の親がいて、自分の子供が共和党員と結婚することに反対するケースが以前は2割ぐらいだったものが、今は半分ぐらいになった。民主党員のパーティーに共和党員のゲストがいると、時間が短くなるという調査もあるくらい」と、露骨に分断が進んでいる。 また分断は「強者」と「弱者」でも進んでいる。ハヤカワ五味氏は「強者と弱者のところで分断されて、弱者が『もう失うものはない』というところで、暴力的な事件を起こしてしまっている。“無敵の人”みたいなものが、今後も増えていくのではないか」と不安視すると、南和行弁護士も「今回暗殺をしようとした人も、政治的・社会的な意味では権力がない。権力がないからこそ、もうわかりやすい暴力しかなかった。政治家あるいは政治に携わる人が暴力を行使するとは到底思えないが、政治家の立ち位置がしっかりした権力になっているからこそ、実力行使に出る人はそこを狙うのではないか」と、追い詰められた弱者ゆえの行動だったのではと語った。