トランプ氏銃撃事件から考える…なぜ人は暴力に走るのか?追い詰められた弱者がある日“無敵の人”に変貌?研究者「他人を攻撃することによって自己肯定感を取り戻している」
■民主主義の中で生まれた弱者が“無敵の人”に「他人を攻撃することによって自己肯定感を取り戻す」
吉田氏もまた、世界で起きている同様の事件も民主主義が招くものだと説明する。「基本的に今回のような事件は民主主義だから起きる。民主主義社会を作っているのは有権者なので、政治家が暴力を有権者に使うことはできない」。また、社会的に孤立した弱者においては、何かしら政治的な思想により暴力を振るうのではなく、私的な怒りをぶつけているものも増えているという。「1960年、70年代のテロは大義を掲げていたが、最近起きた一連のテロは自分の私的な怒りで暴力を行使する理由にする。今回のクルックス容疑者がそうかわからないが、何らか人生で挫折の経験をし、あるいは困窮化した状況があり居場所もない場合がある。そうなると何か他人を攻撃することによって自己肯定感を取り戻そうとする心理的要因が働く」と分析した。 心理学において「公正世界仮説」というものがある。「人間の行いに対して公正な結果が返ってくるものである」と考える認知バイアスを指すが、実社会では自身がどれだけ正しいと思われる行いを繰り返したとしても、期待した結果が公正に返ってくるとは限らない。「過激的なことをする人の場合、何かの不条理あるいは相対的な剥奪感を覚えるような状況に置かれてしまっていることがある。ならばその不公正を、社会への復讐をすることによって正そうとする」。こうして“無敵の人”が出来上がっていく。
■兼近大樹「自分の都合のいい物語を作って僕は加害側に回った。加害者を止めないと何も変わらない」
今後さらなる“無敵の人”を生まないためには、どうすればいいか。EXITの兼近大樹は、若き日の思いと経験をもとに、今後の対策について訴えた。「僕はどちらかというと、社会やそれこそ学校で反抗して生きてきた。決められたルールに乗った時に、『俺だけ損しているな』と感じた。学校にしろ、社会にしろ、みんなは楽しく生きている中で、なんで僕一人そのルールにされたが故に損させられなきゃいけないんだ」という思いを抱えて生きてきた。「そのルールは自分で決めていないし、勝手にゲームに参加させられて、好きじゃないゲームをずっとやらされている感覚があった。だからこそ反抗して、なんとかして自分の地位、名誉を取り戻したいということで暴力を使い始めたが、途中から暴力を使うために理由を探し始めた。自分を証明するために何か粗探しを始めて、何か見つけたら『これだ』と暴力を振るう理由になった」と、過去の行動を振り返った。 また「よくない環境に自分がどんどん走っていった。その時はやはり成功者の失敗は嬉しかったし、お金持ちであればあるほど損をさせていいという意識もあった」と当時の心境を振り返ると、暴力に手を染める弱者たちについても「わかっちゃダメだと思うが “無敵の人”みたいな感覚は僕にもすごくあった。加害者なのになぜか被害者ムーブ。社会の被害者だという勝手なストーリーを脳で作る。自分の都合のいいように物語を作って僕は加害者側に回った」と当時の心境を述べた。 その上で「加害者に寄り添うというのもクソ喰らえな話ではあるが、結局加害する前にそういう人たちをストップさせないと被害者も増え続ける。被害者を救済していくのももちろんだが、加害者を作らないことが一番重要なんじゃないか。加害に回る前の加害者をどうにかしないと何も変わらない」と力説していた。 (『ABEMA Prime』より)