「京」一文字で「かなどめ」と読む“難読”名字。そのルーツはいろはカルタ?
難読名字:京(かなどめ)
「京」という名字そのものも珍しいのですが、その大多数は漢字の読み方通り「きょう」と読みます。全国に点々と分布し、とくに秋田県能代市に集中しています。もとは「京屋」と号していた商家が、戸籍に名字を登録する際に「屋」をとって「京」で登録したものが多いと思われます。ところが、熊本県には「京」と書いて「かなどめ」と読む難読名字があります。 戦前のカルタは五十音順ではなく、いろは順で作られていました。そして、この「いろはカルタ」には大きく江戸、上方、尾張の3種類があり、読み札に書かれている言葉(ことわざなど)が違っていたのです。 たとえば、江戸カルタでは最初の「い」の読み札が「犬も歩けば棒にあたる」だったため、通称「いぬぼうカルタ」ともいわれました。一方、上方カルタの「い」は「一寸先は闇」、尾張では「一を聞いて十を知る」と地域差がありました。 そして、いろは47文字の最後「す」のあとに、江戸カルタでは「京の夢 大坂の夢」、上方カルタでは「京に田舎あり」と書かれた「京」という札がありました。 このことから、「かな」の後ろにある「一番最後(とめ)」という意味で、京を「かなどめ」と読ませているのです。
森岡浩/Hiroshi Morioka
姓氏研究家 1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部在学中から独学で名字の研究をはじめる。長い歴史をもち、不明なことも多い名字の世界を、歴史学や地名学、民俗学などさまざまな分野からの多角的なアプローチで追求し、文献だけにとらわれない研究を続けている。著書は「全国名字大辞典」など多数。
家庭画報.com