後継者・長男へ遺産の大半を渡したい…社長・父の相続発生後、「遺留分」を求める二男とのトラブルを防ぐ「遺言書の中身」【弁護士の助言】
遺言書を作成する際は、遺留分に注意しなければなりません。自分の遺留分を侵害する遺言書があったら、どのように対応すればよいのでしょうか? また、相続発生後に子どもたち同士でもめさせないには、生前にどのような対策ができるでしょうか? 本記事では、遺留分と遺言書との関係、遺留分への対策について、Authense法律事務所の堅田勇気弁護士が詳しく解説します。 都道府県「遺産相続事件率」ランキング…10万世帯当たり事件件数<司法統計年報家事事件編(令和3年度)>
「遺留分」と「遺言」の基本的な概要
はじめに、遺留分と遺言の概要についてそれぞれ解説します。 「遺留分」とは? 遺留分とは、亡くなった人(「被相続人」といいます)の子どもや配偶者など一定の相続人に保証された、相続での最低限の取り分です。遺言書などで遺留分を侵害された場合、侵害された遺留分相当の金銭を支払うよう、遺言などで財産を多く受け取った相手へ請求できます。これを「遺留分侵害額請求」といいます。 遺留分がある人 遺留分があるのは、次の者です。 ・配偶者相続人:被相続人の法律上の夫や妻 ・第1順位の相続人:被相続人の子ども、子が被相続人より先に亡くなっている場合には、その亡くなった子の子である孫 ・第2順位の相続人:被相続人の親。親がいずれも被相続人より先に亡くなっている場合には、祖父母 遺留分の権利は、相続人であることが前提となります。そのため、そもそも相続人ではない人には遺留分はありません。 遺留分がない人 相続人でない人には、遺留分はありません。たとえば、被相続人の長男が相続人である場合、長男の子である被相続人の孫は(被相続人と養子縁組をしていない限り)相続人ではないことから、遺留分もないということです。また、第3順位の相続人(被相続人の兄弟姉妹や甥姪)は、相続人となる場合であっても遺留分はありません。 遺留分割合 遺留分割合は、原則として2分の1です。これに法定相続分を乗じた割合が、個々の遺留分となります。たとえば、被相続人の配偶者と長男、二男の3名が相続人である場合、個々の遺留分はそれぞれ次のとおりです。 ・配偶者:2分の1(全体の遺留分割合)×2分の1(法定相続分)=4分の1 ・長男:2分の1(全体の遺留分割合)×4分の1(法定相続分)=8分の1 ・二男:2分の1(全体の遺留分割合)×4分の1(法定相続分)=8分の1 なお、第2順位の相続人(父母や祖父母)だけが相続人となる場合は、遺留分割合が例外的に3分の1となります。 「遺言」とは? 遺言とは、自身の死後における自身の財産の帰属先などを生前に決めておく最終の意思表示です。遺言には民法で定められた形式があり、所定の要件を満たさなければ法的な効力が生じません。主に活用されている遺言の形態には、「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」があります。自筆証書遺言とは、全文を遺言書が自書して作成する遺言書です。一方、公正証書遺言とは、2名の証人立ち合いのもと、公証人が関与して作成する遺言書です。