3年ぶり9度目全豪Vの国枝慎吾が未来の子供達に明かした勝利学と絆
テニスの試合は3時間を超える長丁場もしばしばで、流れが変わり選手の気持ちが浮き沈みする時間帯が必ずある。しかし、どんな時も「自分ならできる!」という強い気持ちがあれば、「サーブでもレシーブでも、最初のワンショットが思い切り打てるようになる」と国枝は言う。そうして主導権を握り、ゲームを支配していくのだ。 ちなみに今回の全豪オープンの前哨戦から、このアン・コーチが国枝に帯同し、彼をサポートした。約2年3カ月ぶりとなるグランドスラムシングルス優勝に彼女が大きな役割を果たしたことは言うまでもないだろう。 他にもこの特別セミナーでは、迷った時にポイント確率の高い戦術を選択するには、自分の得意なプレー、苦手なプレーを整理し理解しておくことや、目標設定の仕方を伝授。例えば「フォアハンドがうまくなりたい」から一歩踏み込み、「フォアハンドのクロスの角度あるショットやスピンをかけて相手をコートの外に追い出すショットがうまくなりたい」と細かく具体的に言語化することの重要性を惜しみなく伝えた。 憧れの選手の一言一句に真剣に聞き入る子どもたちの姿は、障害の有無にかかわらずアスリートを夢見る全ての子どもたちに共通する。そしてそれは9歳で脊髄腫瘍を発病して下半身麻痺となり、11歳で車いすテニスを始めたかつての国枝そのものと言っていいだろう。自分が日本の車いすテニス界初のプロ選手となって活躍することで、「野球やサッカーのように、車いすテニスをやりたいと思う子どもが増えてほしい。もっともっと夢のある車いすテニス界にしていきたい」というのが口癖の国枝。彼にとっても、こうした子どもたちとの触れ合いは大きなエネルギーになるに違いない。 (文責・高樹ミナ/スポーツライター)