3年ぶり9度目全豪Vの国枝慎吾が未来の子供達に明かした勝利学と絆
例えば、「ピンチになった時はどんな気持ちでプレーしているのか?」という質問に対し、「今、何が起きているのかを常に冷静に分析している」と回答。「だから試合中はあまりイライラしない。試合が終わって何が疲れるかといえば、体よりも頭が一番疲れている」と明かした。 「マッチポイントを握られた時はどうか?」との質問には、「開き直って目の前のボールに集中するだけ。テニスでは最後まで何が起こるかわからない。たとえ大差で負けていても絶対に諦めない」と、全豪オープンでの大逆転優勝にも通じる考え方を子どもたちに伝えた。また、どんな場面でも前向きに平常心を保ってプレーする秘訣として、改めて話すのは珍しい自身のルーティンにも触れた。 「僕の場合、ファーストサーブの時は地面に2回ボールをつき、セカンドサーブの時は4回つく。そうしてどのポイントでも常に同じように入っていくことが大事。ゲーム間の90秒の休憩の時もスポーツドリンクを飲んで、バナナを食べて、水を飲む。そうやって同じ行動をすることで余計なことを考える時間を無くし、勝ちを焦ったり、不安になったりする気持ちを減らす」 それでもミスが続く時、どうやって精神状態を立て直していくのか? この質問に対し国枝は、自身を鼓舞する有名なフレーズ「オレは最強だ!」の誕生秘話を引き合いに出し、世界ランクがようやくトップ10圏内に入った21歳の頃、まさに全豪オープンで出会ったオーストラリアのメンタルコーチ、アン・クインのとっておきの教えを子どもたちに伝えた。 「彼女のカウンセリングを初めて受けた時、『世界ナンバーワンになれますか?』と尋ねた僕に、アンは『あなたはどう思っているの?』と聞き返してきた。そして、今日からは自分が世界ナンバーワンだと断言し、王者のオーラを身にまとうトレーニングを始めましょうと言って、全豪オープンのプレーヤーズレストランで『今ここで、自分はナンバーワンだと大きな声で言いなさい』と僕に指示した。すぐ近くに本当の世界ナンバーワンの選手がいたけれど、『I’m number one!』と叫んだ。その時から毎朝、鏡の前で『オレは最強だ!』と自分に向かって言い続けたところ、脳が少しずつ勘違いして、いつしかそう思い込むようになり、それから約半年後のグランドスラムで本当に優勝することができた」